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「2歳になったのに…」「一方的に喋るだけ」言葉の遅れが気になったら、運動発達をチェックしてみよう

 発達相談室を運営していると、「言葉の遅れが気になるのですが…」という保護者の方からのご相談を多数お受けします。

 「2歳になったけれど、まだ言葉が出ない」といった言葉の遅れに関するご心配ごとだけでなく、「言葉は出ているけれど、言葉マネをしようとしない」「一方的に言葉を話すけれど、会話としてのやり取りが見られない」といったコミュニケーションにも関係する言葉のお悩みもよく伺います。

 実は、言葉の発達と運動発達は、密接に関係しており、運動発達を促すことが、言葉を引き出す効果をもたらせることもあります。そこで今回は、運動発達が言葉の育ちに影響を与える理由と、言葉の遅れが心配な場合にチェックしていただきたい点についてご紹介します。

■運動発達は、言葉やコミュニケーションの発達の基礎

 人が生まれた後、まず発達するのが体(運動発達)です。首が座り、お座りができるようになり、ずり這いや四つ這いを経て、つかまり立ち、伝い歩き、独り歩きを行うようになります。

 運動発達の過程において、赤ちゃんがハイハイや伝い歩きで移動するのは、「モノや人への興味(好奇心)」が育ってくるからです。つまり、「手の届かないところにあるおもちゃや興味のあるモノを取りたい(手にしたい)」「お母さんのところへ行きたい」という気持ちが育ってくることで、「そこまで移動しよう(そこまで行きたい)」という気持ちにつながります。そして、色々と体を色々動かしている間に、移動手段(ハイハイやつかまり立ち)を自然に覚えていきます。

 もし赤ちゃんが、モノや人に対してあまり興味を持たなかったとしたらどうでしょうか。そもそも移動する必要がないので、あまり自分から動くことはしない、ということになります。

 運動発達の源は、モノや人への関心です。やがて、よりモノや人への関心が高まることで、「自分の思っていることを伝えたい」という気持ちが強くなり、それが「言葉」の表出につながっていきます。

 このように赤ちゃんは、「モノや人への関心→そこに行きたいという欲求→体を動かして移動するという活動→達成感を得ることで、よりモノや人への関心が増える→伝えたい気持ちの増大→身振りや言葉を使って伝えようとする活動」という流れを経て、最終的には言葉を上手く使いこなすようになります。

 つまり運動面の発達は、言葉の発達の基礎になっているのです。

■言葉の遅れにもつながる運動発達面の遅れや特徴

 ところで、自閉スペクトラム症などの発達特性によって言葉が遅れている場合は、運動発達にも遅れや特徴が出ていることがよくあります。

 今回は、その特徴2つをご紹介します。もちろん、これらの特徴があるからと言って、必ず発達特性があると断言できるものではありません。あくまでも、私の臨床上の経験から感じる意見であること、脳性まひなどの身体の障害がないお子さんを対象としたお話であることをご承知おきください。

(1)   ハイハイや立ち上がり・独り歩きがかなり遅かった

 これらの原因として、「低緊張(筋肉の張りが弱い)」が原因になっていることが臨床上よくあります。低緊張のタイプのお子さんは、基本的に運動が苦手な傾向にあります。そのため、日々の中で全身の筋肉を使う機会が少なくなり、それがさらに持久力の低下につながったりすることもあります。

 言葉を発すること(発声)にも筋肉の活動が必要ですが、この低緊張による活動機会の減少が、言葉を出すことに関する活動(お腹から声を出す、口の周りの筋肉や舌を使う)が少なくなることにも関係します。

【言葉を引き出す働きかけ】

 こういった場合は、運動遊びや公園遊びを通して、「声を出す機会」を持たせてあげるようにしましょう。鬼ごっこなどで、鬼に捕まりそうになった時、思わず大きな声が出ることがあると思いますが、これらをきっかけに言葉が出ることもあります。 

(2)  体の使い方や手先がかなり不器用

 発達特性のあるお子さんの多くに見られる運動面の課題が、「極端に不器用」です。

 もちろん多少の不器用さは個性の範疇なのですが、ここでいう極端に不器用とは、「ジャンプが上手くできない」、「何もないところでよく転ぶ」、「スプーンが上手く握れない」、など日常生活に支障が出るレベルでの不器用さと捉えてください。

 不器用なお子さんは、活動をしても失敗すること(上手くできないこと)が多くなり、そのため自信を無くしやすいといった傾向があります。その自信のなさは、自己表現する機会が減ることにつながり、さらにそれが「言葉で自分の思いを伝える」ことを避けることになり、その結果言葉で表現する機会が少なくなってしまいます。

【言葉を引き出す働きかけ】

 こういった場合には、そのお子さんが達成できるレベルの取り組みを行わせ、「やればできる」という自信をつけさせてあげるようにしましょう。成功体験を積ませるためには、「簡単に取り組める程度」の課題を設定することがポイントです。間違っても、今のお子さんの能力よりも高いことに取り組ませることのないように注意しましょう。

 成功体験を積むことで、自分に自信を持つことができてくれば、自己表現をする機会が自然と増え、「この嬉しい気持ちをもっと伝えたい!」という気持ちが、発語につながっていくものと期待できます。

■まとめ

・運動発達は、すべての発達の基本です。

・赤ちゃんが、自然に運動能力を獲得していくのは、「モノや人に興味を持ち、それを取りたい、そこに行きたい」という欲求が高まるからです。

・さらに、「もっと伝えたい」という気持ちが強くなることで、言葉が育っていきます。

・発達特性のあるお子さんは、低緊張やかなりの不器用さなどの特徴を持つ方が多くおられ、それが言葉の発達にマイナスの影響をもたらせていることがあります。

・こういったお子さんの場合は、遊びの中で声を出す機会を多く持つ、自分に自信を持てる取り組みをすることで、「人に伝えたい」という気持ちを育てるなどを通して、発語のきっかけを作ってあげましょう。

◆西村 猛 幼児期の発達と発達障害が専門の理学療法士。発達支援の事業所を複数経営。子どもと姿勢研究所代表。全国各地の保育園で運動発達や発達支援に関する講義を実践中。YouTubeチャンネル「こども発達LABO.」では、言語聴覚士の妻と二人で、言葉と体の発達や発達障害に関する情報を発信中。

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