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クレームをドラレコで確認→全て公開 高槻市バスの試みに称賛の声…背景にはバス運転手たちの苦悩も

 コロナ禍で問題になった「カスハラ」。顧客サービスが重要視される業種ほど被害が多いといわれますが、実はバス業界もその一つ。そんな中、乗客らからの「ご意見・苦情」と対応を全てホームページ上で公開している高槻市営バスの試みが、「クレームがいかに盛ったり作ったりしてるか」という“不都合な真実”を可視化している-とネット上で話題になっています。

 「バス停に止まらず車線上に停車したので、運転手が停留所を見落としたのかと思いました。今後このような事が無いよう御指導願います。」

 「ドライブレコーダの映像を確認したところ、のりばに駐車車両があり停車が困難だったため、横へ離れて停車し、乗車対応を行っていたものでした」

 「信号が青になったので横断歩道を渡ろうとしたところ、突然市営バスの回送車が曲がって来て轢かれそうになりました。高槻市営バスはドライバーにどういう教育をしているのか。道路は歩行者優先ですよ」

 「ドライブレコーダーの映像を確認したところ、横断歩道ではなく、車道部を横断しようとして歩道に戻った様子を確認しました。横断歩道の横断者優先については特に厳しく指導を行っているところです。全乗務員に対して、周辺の歩行者の安全確認について、改めて強化するよう周知しました」…

 これは、高槻市営バスが毎月更新している「お客様の声」の一部を抜粋したもの。もちろん、事故につながりかねない危険な運転や、乗務員の望ましくない接客態度などが確認された場合は「厳しく指導しました」などと謝罪していますが、中には「どなられた」という苦情が実はジェスチャー付きで2回促しただけだったり、「時速50キロぐらい出ていた」とされたものが「35キロ未満だったことを確認しました」だったり。事実が確認出来ない場合は「ご指摘の状況は見受けられませんでした」や「お問い合わせの内容とは異なる事実が確認されました」などと冷静に回答しています。

■スーパーや百貨店の「お客様応答」を参考に

 担当者に聞きました。

-この取り組みはいつから?

「私どもは、高槻市が運営する公共交通機関ですが、2018年1月から情報発信強化のため、市のHPとは別に、市バス独自のHPを立ち上げました。それに合わせ、スーパーや百貨店の店頭にあるお客様応答を参考に、良い情報だけでなく、悪いご意見やクレームについても全てオープンにしていこう-ということになりました」

-苦情があった場合は逐一、ドライブレコーダーなどで確認されているのですね。

「もちろんです。ドライブレコーダーは10年ほど前から導入し、事故に至りかねないヒヤリハットを乗務員の研修・指導に生かすとともに、万が一、事故が起きた際の迅速な対応にも役立ててきました。お客様に気持ち良くご利用いただくのが一番ですから、車内の出来事でも客観的に確認し、お詫びすべきはお詫びし、改善できるところがあれば改善しています」

-ただ、「事実」がない場合もあるのですね。

「そういうこともございます。ただ、そうしたご意見も含め『全てオープンに』という思いで記させていただいています。クレームも、お褒めの言葉も、インターネットに載せることで乗務員自身も内容を改めて確認でき、今後に生かすことができると思っております」

 ダイヤ編成や遅れなどについても、ダイヤの組み方や遅れが発生する状況を丁寧に説明してあり、「そうだったのか」と思う応答も少なくありません。今回、クレーマーへの対応が注目されたことについて「まさか、そういう視点で話題になるとは」と驚きつつ「あくまで市民の方々に愛される市営バスでありたいですし、この応答を元に、私どもも至らぬ点を改善し、苦情を減らせたらと考えております」と話します。

■ 無理な割り込みは「日常茶飯事」、あおり運転被害も

 バスは鉄道と比べて、車や自転車、歩行者も通る一般道を通行する分、渋滞などの交通事情による遅延や事故がどうしても生じやすい公共交通機関。ですが、これらの「応答」から浮かび上がるのは、バスに対する交通マナーの悪さです。

 バス会社や現役運転手によると、一般車によるバスの前方への無理な割り込みや停留所付近への駐車は「日常茶飯事」だそう。10月には三重県で路線バスへのあおり運転をした男性が書類送検される事件もありましたが、歴9年というあるバス運転手は「路線バスを運転している人なら一度や二度、人によっては何度も経験あるんじゃないでしょうか」と指摘します。

 事故防止のため、あえて広めに車間を取ると逆にあおられたり、割り込まれたり。「車を運転していると『前のバス遅いなぁ』と思われることもあるかと思いますが、バスは遅くないんです。すっごく速いんです」とこの運転手。「バスの座席にはシートベルトはなく、そこに足の悪いお年寄りや乳幼児連れのお客様も大勢乗られているので、非常時でも急ブレーキが踏めませんし、急ハンドルも取れません。『これなら何かあっても急ブレーキ・急ハンドル使わないで大丈夫』という経験上の最速で走っています。果たして私たちが運転しているのがパトカーだったら?といつも思います。次のバス停まで数百メートルですので、その時に安全に抜いていってもらえたら…」と訴えます。

 また、乗客に車内立ち歩きや駆け込み乗車などに繰り返し注意をするのも、危険や遅延を防ぐためですが、これに激昂する人も「残念ながら一定数いらっしゃいます」とも。そうした状況で働き続ける運転手は「プロフェッショナル」である半面、その精神的疲労も並大抵ではないはず。半面、高槻市営バスの「お客様の声」には「気持ち良い対応をしてもらった」などの感謝の言葉も並び、運転手は「降り際に『ありがとうございました』と笑顔で言って下さるなど、お客様に喜んで頂けると救われます」と話します。

 ありもしないことをわめき立てるクレーマーは言語道断ですが、それ以外でも、乗客や周囲のドライバーも、つい思ってしまいがちな「これぐらいなら…」をぐっと我慢することが、巡り巡って安全運行や定時運行など「自分のため」にもなるのかもしれません。

(まいどなニュース・広畑 千春)

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