コロナ禍の中国で隔離生活! その間の「隔離メシ」って何食べてる? …日本人が選んだワースト&ベスト3
新型コロナウイルスが猛威を奮うなか世界中で「鎖国」の状態が続いている。各国の入国には制限があり、入国後は一定期間の隔離が義務づけている国がほとんどだろう。
そのなかでも中国では厳格な隔離措置が取られている。隔離中は施設の敷地どころか部屋から1歩出られず、施設のスタッフを含め人との接触は一切禁止。食事はどうしているのかというと、弁当の支給が基本だ。中国の弁当と言えばあまり良いイメージがないような……実際、隔離生活ではどんな食事が出されているのだろう? 美味しい? マズい? 隔離生活を終えたばかりの日本人に聞いてみた。
■ある日本人の隔離生活
話を聞かせてくれたのは、2020年10月の頭に入国し上海で隔離生活を送っていたケイスケさんだ。現地ホテルで14日間、誰とも接触せずに過ごしてきた。
隔離生活の食事は、定時に弁当箱に入ったものがドアの前に置かれ、それを自分でピックアップして食べるというスタイルである。時間は7時、11時、17時の3回だ。
ケイスケさんの隔離先では朝食のパターンは決まっていて、「おかゆ」「漬物のようなおかず」「マントウ(具のない肉まん)か油条(中華風揚げパン)」「ヨーグルト」そして、中華スパイスの強烈な香りが特徴の「煮卵」が基本。
昼食と夕食は仕切りのある弁当箱に「仏壇かな?」と思うほどギュウギュウに盛りかためられたご飯、主菜、副菜3種とスープである。たまにビタミン不足への配慮かミカンなどの果物や紙パックのフルーツジュースがつくこともあったそうだ。
支給される弁当は、日本の弁当と雰囲気が異なるものの、食べられないという見た目でもない。実際の味はどうなのだろうか? ワースト3、ベスト3式でその内容を語ってもらった。
■これはさすがにヤバすぎた…隔離メシ・ワースト3
【ワースト3:謎のタコさんウインナー】
可愛らしく飾り切りされたウインナー。タコさんウインナーは日本人にとって馴染みがあり、刺激の少ない隔離生活に彩りをもたらしてくれそうなおかずである。だが、実際のところは……
ケイスケさん「一口食べると『ブンニュッ』と何とも言えない歯ごたえでした。魚肉とも豚肉とも思えない謎の食感と味です。ちょっと正体がわからないものは無理でした。わざわざタコさんにするあたり、何かしらの気遣いを感じましたが……ちなみにウインナーと一緒に入っている団子も、ウインナーと全く同じ味と食感でした。私は一体何を食べたのでしょうか」
【ワースト2:スリムすぎる手羽先】
ケイスケさんがワースト2に挙げたのは手羽先だ。味付けに独特な香辛料でも使われていたのだろうか? 実際の弁当の写真を見てみると……味以前の問題だった。
ケイスケさん「痩せ細りすぎて、どこを食べたらいいかわからないんですよ。味より何よりまず食べられなかった。手羽があるのにない、そんな弁当はとても寂しかったです」
【ワースト1:ザリガニの水槽臭がするエビ】
そしてワースト1に挙げられたのはエビだ。弁当箱には頭つきの立派なエビが何匹も盛り付けられている。エビ本来のナチュラルな色からは、シンプルな味付けであることが見てわかる。マズイ要素は見当たらないのだが……
ケイスケさん「ニオイが強烈なんです。生臭いような、ザリガニの水槽のようなニオイがしました。エビの出自を想像すると怖くて、ちょっと食べられなかったですね。本来、私はエビも中国のザリガニ料理も好きなんです。あのエビと普通に食べられるエビとザリガニの違いって何なのでしょうか」
ワースト3だけを聞くと、「中国さん、もう2020年なのに弁当のクオリティはそれでいいんですか」と震えてしまいそうになる。しかし、支給の食事には隔離生活の一服の清涼剤とも言える美味しい料理もあったそうだ。また食べたいと思うほど美味しかったベスト料理は以下の通り!
■また食べたい! 美味しかった中国隔離メシ・ベスト3
【第3位:豚とナスの炒めもの】
ケイスケさん「日本の町中華にもありそうな料理でした。塩系の濃い目の味付けでめちゃくちゃゴハンがすすみますね! 満足感もあって良かったです」
【第2位:鶏とピーマンのピリ辛炒め】
ケイスケさん「見た目は醤油煮みたいな色をしていて、全然赤くないのですが結構唐辛子がきいていて辛いんです。コクはオイスターソースですかね。これも白ご飯が進みます!」
【第1位:手羽元の煮込み】
ケイスケさん「これは美味しかったですね。日本の煮物にもありそうな甘辛い味付けで、お箸を入れるとホロホロッって肉が崩れるんですよ! 美味しすぎてご飯が進むどころか飯泥棒です」
■隔離メシを美味しく食べるコツ
ベスト3に挙げられた料理はどれも美味しそうだ。毎日、好みの食事が選べたら隔離生活のストレスも半減することだろう。
だが残念ながら、ケイスケさんの隔離先では食事のメニューを選ぶことはできなかった。そしてメニューは1週間ごとのローテションだったという。隔離2週目はまた同じ弁当が出て来たそうだ。苦手な料理が出てきて「またコイツか……」と肩を落とす姿が目に浮かぶようである。しかし選択の余地はない。そんなとき、ケイスケさんはどう対策していたのだろうか?
ケイスケさん「何より大切なのは温かいうちに食べることです。中国の弁当は冷めたらマズくなります。美味しい料理でも劇的にマズくなるので、どんな料理でもとにかく届いたらすぐに食べるようにしました。その結果、食事の時間がどんどん早くなりましたね」
確かに中国を含む中華圏では冷菜を除くと「冷めた食事」を食べる習慣があまりない。今でこそドラマやアニメで日本の弁当文化を知る中国人も多いが、近年でさえ私(筆者)も中国人学生から「日本ではお昼の弁当を温めずに食べるなんて。ちょっと信じられない」と言われたこともあるくらいだ。
つまり中国では料理は温かいまま食べることが前提なので、「冷めても美味しいように調理する」という概念が薄いのである。ケイスケさんの「できるだけ早く食べる」という対策は理にかなっていると言えるだろう。
そして、もうひとつの対策として「インスタントのふりかけと味噌汁」が挙げられるそうだ。
ケイスケさん「コストコで大容量パックを買って持ってきました。これは大正解でした。料理のクオリティはホテルによって違います。私はマシな方でした。でもどのホテルに当たるかは入国してからでないとわからないですし、支給される食事が万人の口に合うとも限りません。中国に免疫がある方は別だと思いますが、私は中国の隔離にふりかけと味噌汁は必須だと思います」
そんな隔離生活の食事を振り返り「いい経験になった」と話すケイスケさん。何でも前向きに考えられるメンタルがあれば、口に合わない料理が出てきても乗り切れるのかもしれない。
(まいどなニュース特約・沢井 メグ)