「高学年になって授業について行けなくなった」その原因、“学力”だけじゃない可能性も…カギは「目」?

 小学校のお子さんを持つ保護者の方から、「高学年になって、授業についていけなくなった」などの学習に関するお悩みをご相談いただくことがあります。学習の課題というと「勉強時間の少なさが原因では?」「塾に行かせて学習の底上げを図ったほうがよい?」と、学習そのものへの取り組みをさせることが多いと思います。しかし、高学年になってから目立ってくる学習の遅れには、本人の頑張りや学習時間の問題だけではなく、「目のコントロール力の弱さ」が裏に隠れていることがあります。

 今回は、目のコントロール力の弱さが学習の遅れにつながる理由と、日々の活動や遊びの中で目のコントロール力をアップさせる方法についてご紹介します。

(※ここでいう目のコントロール力の弱さとは、「目を使う力」のことであり、「視力」のことではありません) 

■目のコントロール力の弱さと学習の遅れ

 小学校高学年になると、授業のスピードが早くなります。また、先生の板書のスピードが早くなったり、板書の文字が小さくなったりします。

 目のコントロール力が弱いお子さんは、板書の字を素早く目で追うことが難しいことがあるため、「板書のスピードについていけない」「ノートと板書を交互に見ることが遅れる」ようになります。こういった少しの遅れが積み重なって、学習が徐々に遅れていくことになります。

 学習の遅れが目立ってきた時に、一般的な手立てとしては「学習時間を増やす」「塾に行かせる」など学習の底上げを目指すことが多いと思います。しかし、勉強時間を増やしたり、塾に行かせても学習の底上げが見られない場合は、「目のコントロール力が弱くないか」といったことについて、下記の方法でチェックしてみてください。

■「目のコントロール力」チェック法

 お子さんに次のような現象が見られる場合、目のコントロール力の弱さがあるかも知れません。

1.ケアレスミスが多い

 何度繰り返し勉強しても、いつも「同じところでケアレスミスが起こっている場合」は、ノートの文字などをきちんと目で捉えられないことが考えられます。例えば、算数の繰り上がり問題では、繰り上がりの数字(10の位の横に書く小さな字など)を読み飛ばしているかも知れません。また、本読みで、読み飛ばしが多い場合も、文章がしっかりと目で追えていないことが考えられます。

2.探しものが苦手

 机の上に置いている消しゴムをずっと探している、など「探しものが苦手な場合」も目のコントロール力が弱いことも一つの原因として考えられます。

3.指先がかなり不器用

 ハサミで直線を切る、折り紙で端と端を合わせて折る、などが「不器用で苦手な場合」も、目でしっかりと対象を見ることができていないことが考えられます。多少の不器用さは誰にでもあることですが、目が上手く使えていないお子さんの場合は、かなり不器用であることが多いです。

4.キャッチボールやサッカーなどの球技が苦手

 投げられたボールを目でしっかり追うことができない場合、上手くキャッチできないなどが理由で、「球技が不得手」になっていくことがあります。もちろん初めは誰でも上手くできないものですが、「何度練習してもなかなか上達しない」場合は、目のコントロール力の弱さが原因になっているかも知れません。

■対応方法

1.活動や遊びの中で目のコントロール力を養う

 意外に思われるかも知れませんが、昔ながらの遊び(伝承遊び)は、目のコントロール力をアップさせるのに効果的な遊びが多くあります。例えば、上記でもご紹介した「折り紙」は、目でしっかりと折る場所を見るため、目を使う機会が持てます。また、「ハンカチ落とし」では、周囲を回っている人(鬼)をしっかりと見る必要があるため、自然に目を使う練習ができます。さらに、「ミッケ」や「ウォーリーをさがせ」のような絵本は、「目を使って、対象物を探し出す」という練習にもなります。

2.環境を整える

 子どもに頑張らせるだけでなく、環境を整えてあげることも大切です。

 例えば、教室では前の方に座ることで、黒板が見やすくなり、また他の視覚刺激が入りにくくなるため、より授業に集中しやすくなります。お家での取り組みとしては、勉強机の上を整理し、必要なものだけを置くといったシンプルな環境にしてあげることも効果的です。教室と同様に、目に入ってくる情報を少なくしてあげることで、対象に向かいやすくなるためです。

3.タブレットなどICT機器を活用する

 加えて可能であれば、タブレットなどのICT機器を導入することで、より学習が行いやすくなるでしょう。例えば、教室では板書をiPadで撮影し、その画面を見ながら問題を解くなどすれば、じっくりと問題を見ることができます。また、板書が消された場合でも、後で先程撮影した板書を再度確認することができます。自宅では、問題集とノートの間を目で往復することに苦手さがある場合、タブレット学習に特化した問題集(PDFファイルなど)を表示し、その画面上で問題を解くことで、効果的な学習が行えます。

■まとめ

 目のコントロール力に弱さがあるお子さんは、小学校高学年になると、授業スピードが速くなる、板書のスピードや文字が小さくなる、などが原因で、学習の遅れが目立ってくることがあります。そういった場合は、間違った問題を繰り返し解かせるといった従来の学習方法を行う前に、目のコントロール力の弱さが隠れていないかどうかチェックしてみましょう。もし、目のコントロール力が弱い場合は、活動や遊びの中で目を使う練習をしたり、視覚的に落ち着いて学べる環境を整えたり、タブレットなどを上手く活用することで、学習の底上げを図ってあげましょう。

◆西村 猛 幼児期の発達と発達障害が専門の理学療法士。発達支援の事業所を複数経営。子どもと姿勢研究所代表。全国各地の保育園で運動発達や発達支援に関する講義を実践中。YouTubeチャンネル「こども発達LABO.」では、言語聴覚士の妻と二人で、言葉と体の発達や発達障害に関する情報を発信中。

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