豊田真由子、精神的に「しんどい状態」のときは専門家によるケアを 8月の自殺者は前年比15%超増加

コロナ禍の今年、女子プロレスラー・木村花さんをはじめ、俳優・三浦春馬さん、女優・芦名星さん、そして先月27日、女優・竹内結子さんと、自殺とみられる死が続いている。令和元年の自殺者数は20169人、そして、本年8月は1849人で、前年同期比15.3%増加している。元厚労省官僚、元衆議院議員・豊田真由子は、その原因は本人にしか分からない様々な事情と察した上で、精神的に「しんどい状態」に陥ったときは、専門家によるメンタルケアが急務であると訴えた。

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今回、この内容で書くかどうか、迷いました。

人が自ら命を絶つに至るには、想像を絶する様々な事情があり、それは究極的には、ご本人にしか分からないことなのだろうだと思います。

誰にも言えないという場合もありましょうし、あるいは、周囲の励ましが、心に届かないことも多いだろうと思います。私自身、「この絶望がずっと続いていくのだ」とずっと暗闇の中にいて、「いつかいいことあるよ」と励まされても、「そんな気休め、聞きたくない」と思っていましたし、「『神様は、乗り越えられない苦しみは与えない』というよ」と言われれば、「いやいやいやいや、あまりに甚大なで乗り越えられない苦しみに襲われるから、これだけ多くの人が自殺してるんでしょう」と思っていました。

実は若い頃も、「誰にも必要とされていない自分は、生きてる意味が無い」とずっと悩んでいました。もちろん、周囲には、そんな素振りは見せられませんでした。

お一人おひとりかけがえのない人の死とそこに至る苦しみ、家族や親しい人たちの悲しみを、数値化・一般化して論じることはできませんが、私たちが、あるいは、社会や行政が、何をなすことができるか、を考える上で、必要なことだと思うので、データを基に考えてみます。「適時かつ効果的な科学的根拠に基づいた介入、治療と支援により、自殺と自殺企図は予防できる」として、取組みを進める必要があります。

厚生労働省・警察庁によると、令和元年の自殺者数は20169人で、男性14078人、女性6091人となり、対前年比671人(約3.2%)減少しています。

ただし、本年は、新型コロナウイルスの影響もあり、状況が変わってきています。4月の自殺者数は減りましたが、8月は大きく増えています。厚生労働省と警察庁によると、自殺者数に、4月は1455人と前年同期比で19.8%減少し、一方、8月は1849人で、前年同期比15.3%増加しました。こうした点からも、新型コロナウイルスにより苦境に追い込まれた方々の救済が急務です。

自殺未遂については、全容を把握することはさらに困難ですが、ご参考として、平成29年の自損行為による救急自動車の出動件数は、52347件、搬送人員は35377人となっています。

厚生労働省の自殺対策白書(令和元年年)によれば、世界各国の自殺死亡率(人口10万人当たりの自殺者数)について、日本は18.5で、世界ワースト9位(リトアニア28.8、ガイアナ27.7、韓国26.5、スリナム23.7、スロベニア20.5、ラトビア19.6、ロドリゲス島18.9、ウルグアイ18.7に次ぐ)で、G7(主要先進国首脳会議)ではワースト1位(フランス13.8、アメリカ13.8、ドイツ12.3、カナダ11.5、イギリス7.5、イタリア6.6)です。

繰り返しますが、自殺の原因というのは、ひとつではなく、様々な出来事が複雑に絡み合っているでしょうし、究極的には、ご本人にしか分からない、あるいは、ご本人すら分からないということも、あるだろうと思います。そうしたことを踏まえた上で、下記のデータをご覧になってください。

自殺の原因・動機は、年齢層によって異なりますが、全年齢層で見ると、(1)健康問題(39.9%)、(2)経済・生活問題(13.1%)、(3)家族問題(12.1%)、(4)勤務問題(7.7%)、(5)男女問題(2.7%)、(6)その他(4.1%)、(7)不詳(20.3%)となっています(厚生労働省:平成30年)。

倒産・失業などに対する経済・雇用対策、経済的困窮へのきめ細やかな支援、子育て・介護・DV被害者等へのサポート、学校でのいじめ対策、医療現場や地域社会でのサポート等々、多様なアプローチが必要となります。

そして、ここで留意が必要なのは、「健康問題」は、例えば、「うつ病の影響で自殺した」と判断された場合には、基本的にはここに分類されるわけですが、しかし、厳密にいえば、「うつ病だから自殺した」のではなく、「他の要因がうつ病を引き起こし、うつ病という経過を辿って、自殺という結果に至った」のだということです。

そして、WHOによれば、自殺既遂者の90%が精神疾患を持ち、また60%がその際に抑うつ状態であったと推定されています。すなわち、自殺を遂行する方は、その時点において、なんらかの形で精神的な疾患の病名の付く状態にある、ということです。

ここで大切なのは、原因はなんであれ、人が死を考えるような「しんどい状態」にある場合に、もちろん、その根本的要因を緩和することが必要になるわけですが、その人を死なせないためには、取り急ぎ、その「しんどい状態」にあるメンタルをケアすることが急務だということです。

ご家族にも、友人にも悩みを明かせない、という方もいるでしょう。あるいは、受け手側も、打ち明けられても、どうしてあげたらよいか分からない、という方も多いでしょう。ここで、登場するのが、「非常につらい状態にある人を、どう対応したら救えるか」をトレーニングしてきた精神医療やケアの専門家たちです。

しかし、我が国においては、日本ではまだまだ精神科受診やカウンセリングを受けることへのハードルが高く、人の目を気にしなければならない、そのことを家族や職場にも言えない、あるいは、それ故に、結局ケアを受けるに至らない、ということも多いと思います。けれど、家族や友人に相談することに抵抗がある人も、むしろ、専門家である赤の他人であるからこそ、話しやすい、受け入れやすい、ということもありますし、何よりも、専門的なケアを受けることによって、精神状態が最悪を脱することができる可能性があります。クリニックや各種相談窓口に、まずは、連絡をしてみていただきたいと思います。

【相談窓口】

・こころの健康相談統一ダイヤル 電話番号0570-064-556

・よりそいホットライン フリーダイヤル0120-279-338

・いのちの電話 電話番号0570-783-556、フリーダイヤル0120-783-556

・チャイルドライン(18歳まで) フリーダイヤル0120-99-7777

・子供のSOS フリーダイヤル0120-0-78310

◆豊田 真由子 1974年生まれ、千葉県船橋市出身。東京大学法学部を卒業後、厚生労働省に入省。ハーバード大学大学院へ国費留学、理学修士号(公衆衛生学)を取得。 医療、介護、福祉、保育、戦没者援護等、幅広い政策立案を担当し、金融庁にも出向。2009年、在ジュネーブ国際機関日本政府代表部一等書記官として、新型インフルエンザパンデミックにWHOとともに対処した。衆議院議員2期、文部科学大臣政務官、オリンピック・パラリンピック大臣政務官などを務めた。

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