僧侶が指摘する新型コロナで露呈した心のウイルス「三毒」…「マスク転売」「中国への偏見」

 新型コロナウイルスの感染拡大は「見えない不安」の蔓延に加え、マスクやトイレットペーパー等の買い占めと転売、ネット社会でのデマ情報、感染者と家族、クラスターとなった店や地域、さらには感染者の多い国の人たちへの偏見や差別といった弊害を生んでいる。そんな今だからこそ、人間の本質を射抜いたアドバイスが求められている。YouTube チャンネル「大愚和尚の一問一答」で約19万人の登録者がおり、著書「苦しみの手放し方」(ダイヤモンド社)を出版した僧侶の大愚元勝氏に、現在の社会情勢に対する処し方を聞いた。

人間の嫌な部分が見え隠れし、目に見えない恐怖によって平常心を失いがちな昨今、人はどのような気持ちで対処すべきなのだろうか。大愚氏は「正しく恐れることですね」と説いた。

 同氏は「怖がり過ぎるのも、大丈夫だと高を括るのもダメで、正しく恐れること。その上で、どうしても肉体への感染や影響を恐れるわけですが、同時に、有事の際には、心に感染する精神への影響があります。それが仏教でいう『三毒(さんどく)』というもので、『貪(とん)』『瞋(じん)』『癡(ち)』という、3つの煩悩です」と解説した。「『貪』はむさぼりという字で欲。『瞋』は怒り、『癡』は無知の心、愚かさです」という。さっそく、この三要素を説明してもらった。

 (1)【貪】 欲ということ。人の弱みに付け込み、例えば600円のマスクが6000円でネット販売されている。それを見て『もうけるチャンスだ』『自分さえ助かればいい』と思って買い占めをする人も『欲』の暴走です。

(2)【瞋】 その人が持つ怒り。マスクやトイレットペーパーを買う行列でケンカになって殴り合いになったりとか。元々、こういうことが起きる前から本人の中に潜伏していた、例えば『中国の方への偏見』とか、そういったものが一気に噴き出すのです。14世紀に欧州でペストが流行した時も、ユダヤ人の方たちが迫害されました。皆さんの中にある怒りや不満が噴き出すことになる。これをちゃんと観察して整えていかなければならないということですね。

 (3)【癡】 愚かさ、無知。デマの情報に振り回されたりすること。きちんと自分で情報源をよく調べて、いいかげんな情報に振り回されないことが、こういう時にはとても大事です。

 以上の3点を踏まえて、大愚氏は「新型コロナウイルスを恐れるだけでなくて、私たちの心に潜伏していたウイルス、心のウイルス、つまり『三毒』というウイルスを暴れさせないことがまず大事なことだと思います」と訴えた。

 同氏は「毎日、インターネットでもテレビでもコロナウイルスのニュースが流れると、本人は感染していないのに、気分が落ち込んだり、景気まで落ち込んできます。『景気』とは人々の『気持ち』なので、みんなが『もうだめだ』と思うと株価も下がり、健康な人も免疫力が下がっていく。有事の時、人々の心がバラバラに分断されたり、人のせいにするようになるが、そうではなく、前向きに協力し合っていくこと」と指摘。その上で「今回、この『経験』を積んでおかないと、また今後、何かが起きる度につぶれてしまう。正しく恐れながら、みんなで乗り越えようという意識を持っていただきたいですね」と説いた。

(デイリースポーツ・北村 泰介)

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