とんかつ店が「いたずら予約」被害、偽計業務妨害罪で懲役刑も…「行列」北村弁護士が解説

 奈良県にある飲食店がツイッターで、電話で弁当の大量注文を受けたものの注文者が取りに来ない「いたずら予約」の被害にあったと投稿したところ、「それは許せない」「厳罰に処してもらいたい」「うちも2回ほどあります」などと大きな反響を呼んでいる。実直に仕事をこなす店側をあざ笑うような卑劣な行為はどのような罪に該当するのか。日本テレビ「行列のできる法律相談所」に出演する北村晴男弁護士にたずねた。

■3年以下の懲役または50万円以下の罰金

 奈良にあるとんかつ店「まるかつ」が12日にツイッターに投稿した。「年に1~2回ほど、電話でお弁当を何人前も注文しながら来店されない『いたずら予約』の被害にあいます。単にお忘れかもしれないので責めませんがお弁当の無駄よりつらいのは、電話で予約を受けてくれたスタッフの申し訳なさそうな顔を見なければいけないことだということを、どうか知ってほしいです」と二度と同様のことを繰り返さないように切実に訴えた。大量の弁当の写真もあった。

 このツイートは11万件以上リツイートされ、23万件超の「いいね」が付き、大きな反響を呼んでいる。店側のメニューを見ると値段は1000円から2000円程度。被害額は数万円にのぼるとみられる。

 こういった行為について北村弁護士は「偽計業務妨害に当たる可能性が高い」と指摘。「取りに行くのを忘れていたのなら別ですが、買う気もない、必要もないのに注文をして作らせるということは業務妨害罪に当たる可能性が高いです」との見解を示した。偽計業務妨害は刑法233条に規定され、「虚偽の風説を流布し、または偽計を用いて、人の信用を毀損し、またはその業務を妨害した者は3年以下の懲役または50万円以下の罰金に処す」となっている。偽計とは他人を欺くはかりごと、またはその手段を指す。

 奈良の店主は「お忘れになったかもしれないので責めない」と警察に被害届け等を出す考えはないとしている。とはいえ、万単位の被害は店側にとって決して少額ではない。他方、殺人や強盗致死傷といった人の生命に関わる重大犯罪とは言えない。被害届けを出すと警察はどのように判断するのか。

■北村弁護士の事務所も危うく被害に

 北村弁護士によると、このような行為をする人間は常習性が高いことが想定される。従って被害が長期間でかつ広範囲に及んでいることも考えられ、警察が「これは立件する価値が高い」と判断して積極的に捜査してくれる可能性も一定程度あるという。電話での注文であれば、警察が事業会社に照会して通話記録を手に入れることは難しいことではないという。

 似た事例は珍しいことではなく、北村弁護士の事務所もかつて何者かによって飲食物を大量に注文されたことがあった。しかし、業者側が不審に思い、事務所に問い合わせて被害を未然に防ぐことができたという。

 奈良のとんかつ店は「残念なこともありますが、こんなうれしいこともあるのが飲食店です」として、長距離トラックのドライバーが「仲間が助けてもらったのでお礼に食べに来ました」と家族で食事に来てくれたことを投稿している。

◆北村 晴男 弁護士。長野県出身。日本テレビ系「行列のできる法律相談所」にレギュラー出演。趣味はゴルフ、野球。月2回スポーツなど幅広いテーマでメールマガジン「言いすぎか!!弁護士北村晴男 本音を語る(まぐまぐ)」を配信中。

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