都会の迷宮への入口か!? SNSで話題の「新宿D5出口」の真相を探った

 東京都内の地下鉄構内にある出口の行き先を示す案内板の矢印がSNSで話題になっている。矢印が左斜め下を指し、その先に小さな扉があることから、ツイッターでは「(出入りするには)難易度が高い」「出口が小さすぎて」といったコメントが書き込まれていた。さっそく現場で実態を確かめた。果たして、時空のゆがんだ「都会のエアポケット」に迷い込んでしまうのか!?

■話題の案内板は大江戸線の新宿西口駅構内

 ツイッターで話題になっている案内板は、都営地下鉄大江戸線の新宿西口駅構内にあった。他の出口を示す矢印はおおむね平行だが、「D5出口」の行き先を示す矢印だけが左斜め下の路面を指している。矢印の先には小さなステンレス製の扉があった。

 その扉は、通路の床から50センチくらいの位置にあり、そのうち下部は格子状の通風孔のようになっていて高さ約10センチ、上部の扉部分は高さ約40センチ。横幅は約50センチ。人間の大人が腰をかがめて扉を開け、路面に腹ばいになって通り抜けできるかというと、極めて難しそうだ。というか、そんなことはありえない。

■「猫の抜け道かよ」「ロックを外すと隠し扉が開くんだよ」

 ツイッターには「猫の抜け道かよ」「そこでロックを外すと隠し扉が開くんだよ」「それはダミーで壁の一部が動くのではないでしょうか」といったコメントがあった。この画像から喚起されたイメージを膨らませて楽しんでいるようだった。

 だが、現場に行くと、そんな発想は全く起きなかった。すぐ左手にある柱にも同じく左斜め下を指す矢印があり、その先には下りのエスカレーターがあった。なんのことはない、この斜線の矢印は「エスカレーターで下ってください」ということだった。

 エスカレーターを下ると同駅の改札があり、今度は右斜め上を指すD5出口の表示に従って上りの短いエスカレーターを乗り継ぐと、地上の小滝橋通り(新宿区)に出た。最初に見た当該の案内板からの所要時間は3分弱。D5出口に至る合計5つの案内板はいずれも見やすい場所に設置されて指示も的確で、4つのエスカレーターを乗り継いでスムーズに移動できた。

■運営する都営交通に聞いた

 現場に足を運んだことによって、ツイッターの反応とのギャップを感じた。そこで、運営する都営交通に聞いた。

 担当者はSNSで取り上げられた今回の件について「特にコメントすることはございません。お客様からの反応はありません」と回答した。投稿の肝(きも)である「矢印の先の小さな扉」については「当該扉は点検口で、壁の内側にある排水溝を点検・清掃するためのものです」と説明。「そのため、お客様は触れないようにお願いいたします」と呼びかけた。

 新宿西口駅の開業は 2000年12月。東京五輪・パラリンピックが開催される来年には20周年を迎える。担当者は「今後とも、お客様に分かりやすい案内サインの掲示に努めてまいりたいと思っております」と意欲を示した。

 取材を終えて考えた。SNSに投稿された案内板の画像は「木を見て森を見ず」という言葉における「木」だった。空間からの画像の切り取りは、対象を「作品」として面白くする技法でもある。案内板の矢印と小さな扉が「たまたま」うまく重なって、そこに「意味」が生じたことにより、想像が膨らんだわけだ。だが、現場で「森」(全体)を見れば、表示の矢印が左下方向のエスカレーターを指していることが容易に分かる。真相を知りたければ、やはり現場に行くしかないと実感する一件だった。

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