猫がいるお花屋さん…彩り豊かな花々と人懐こい猫 うちの福招き猫~西日本編~vol.3

 JR岡山駅から東へ徒歩10分。岡山市北区にある「不二花店(ふじはなみせ)」は明治時代から150年以上続く老舗の花屋さん。ここで季節の花々に囲まれて過ごしているのが、茶トラの「みるく」(オス、推定8歳)だ。飼い主で従業員の不二惠子さん(59)にとって、みるくは「弟のような大切な存在」という。

  ◇  ◇

 みるくは8年前、近くの公園で、ダンボールの中に捨てられていた3匹の子猫の中の1匹です。まだ生後間もない頃、近所の女性が見つけて保護し、里親を探しながら育ててくれたんです。離乳期を迎えた頃に譲っていただきました。残りの2匹も新しい飼い主さんにもらわれていったそうです。

 ちょうどそのころは、18年間一緒に過ごしてきたキジトラのメス「めぐ」が腎不全で亡くなり、四十九日が過ぎたくらいでした。猫のいない生活がさびしくなり始め、「もしどこかに猫がいたら教えて」と、友人に頼んでいたんです。その友人の娘さんと、3匹を保護した女性が知り合いで、縁が繋がりました。

 めぐは臆病で知らない人を見るとすぐに逃げ出していましたが、みるくは人懐こく、お客様が来ると駆け寄っていきます。なぜか中高年の男性が好きみたい(笑)。みるくがやってきてくれたおかげで、めぐが亡くなって心にぽっかり空いた穴がふさがっただけでなく、我が家も笑顔でいっぱいになりました。ちょっと生意気、ドジなみるくですが、今では私の弟のような大切な存在です。

 うちは1階が店、2階が生け花教室と倉庫、3階は自宅で、みるくは1階から3階まで、自由に行ったり来たりしています。店入口横のショーケースは元々、花をストックしておくスペースだったのですが、1歳になる前、背もたれが猫の顔の椅子を置いたら、そこでひなたぼっこをしてくつろぐようになり、みるく専用のテラス席になりました。店の前を通る人は「本物の猫がいる!」とびっくり。それで次第に「猫のお花屋さん」と呼ばれるようになったんです。

 店頭には、季節のいろんな種類の花が並んでいます。トルコキキョウの花の匂いを嗅ぐのがすごく好きですね。ただ、猫にとっては有害な花もあるので、万が一誤って食べたりしないよう、常に気をつけています。小さいころから商品をかじったりしたら厳しく叱ってきたので、してはいけないことはよくわかっていると思います。

 作業カウンターで花束を作っていると、そばに登ってきて、花と花の間を踏まないよう上手に歩き、花束の出来上がりを待つお客様の相手をしながらじっと待っていることがあります。お客様からは「そんなひとときがたまらない」と言われることもありますね。

 中には30代くらいのこんな男性も。その方は1年に1度、母上様の誕生日前になると必ずうちに来て、フラワーギフトを注文されるんです。そのとき、みるくに会うのもすごく楽しみにされていて、「今年もみるくに会えてよかった」って。そんな笑顔を見たときは、猫がいる花屋さんでよかったと思える瞬間です。(まいどなニュース特約・西松 宏)

【店名】「不二花店」

【住所】岡山県岡山市北区中山下1-7-26

【電話】086-223-4102

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