携帯の使い切りお尻洗浄器を仮設トイレに導入 日本独自“シャワー式便器文化”浸透

被災地の仮設トイレでも導入されている携帯用お尻洗浄器
トイレットペーパーの上部に置かれた携帯お尻洗浄器=東京ビッグサイト
トイレットペーパーの上部に携帯お尻洗浄器が置かれた仮設トイレのモデル=東京ビッグサイト
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 「おしりだって、洗ってほしい。」のキャッチコピーで、当時、サブカルチャーのアイコンだった歌手・戸川純が出演したTOTOの温水洗浄便座「ウォシュレット」のテレビCМがお茶の間に流れたのは1982年のこと。その後、シャワー式便器は日本に浸透し、世界の中でも特筆される“日本文化”になっている。近年では、被災地の仮設トイレに携帯の使い切りお尻洗浄器が導入されているという。その経緯や使用感をリポートする。

 「オフィス防災EXPO」(東京ビッグサイト)に足を運んだ際、「お尻シャワシャワ」という商品に興味を持った。全長20センチ弱、一見してスポイトのような形で、16ミリリットルの精製水が入った部分はポンプ状になっている。

 製造販売元の「徳重(とくえ)」(本社・名古屋市)は工業用ゴム製品を製造しており、特に自動車用部品では海外でも取引が多いという。そのため、頻繁に海外出張があり、その際、社員がシャワー式便器がないトイレ事情に困ったことを機に開発したという。

 同社の担当者に聞いた。「トイレの後ですぐにシャワーを浴びたり、トイレットペーパーを事前に濡らして使用するといった方法は宿泊ホテルでは可能でも、外出先では通用しないため、市販の携帯お尻洗浄器を購入したが、水を入れたり、使用後の洗浄などで手間がかかった。また、ノズル先端に排泄物が付着するなどの課題があったことから、そうした再利用可能な商品ではなく、使い切りの洗浄器を開発した」。そういう経緯があった。

 2017年に発売。もともと、防災グッズというわけではなく、シャワー式便器に慣れた人が外出時、その環境にないトイレで使う意図だったが、被災地の仮設トイレでのニーズとも合致。18年10月には防災安全協会の「防災製品大賞」新製品・開発部門で金賞を受賞。また、日本ハム球団の米アリゾナキャンプや、スキージャンプ競技の海外遠征時にも選手やスタッフのために提供されている。

 実際に使ってみた。先端のノズルを開けてお尻に近づけ、約45度の角度で、ポンプの部分を指で押すと…。

 水が来た。水と空気が混ぜ合わされてポンプから噴射。すぐ指を離すと、容器に内圧がかかって空気が入る。再び押す。残った水が噴き出す。その繰り返し。数回にわたって、少量の水でもそれなりの水量感覚と水圧を感じることができた。

 1986年と87年に、記者はインドやネパールなどに長期間滞在し、公衆トイレを使う時は便器脇にある水道蛇口から備え付けの空き缶に水を貯め、現地の慣習に従って左手で直接洗った。当時はシャワー式便器を使った経験も皆無だったので、それほど神経質にもならず、現地でトイレットペーパー1巻の値段が安宿の相部屋ベッド代1泊分より高かったこともあり、郷に入っては郷に従った。

 その30年後、同社の社員は海外のトイレ事情を元に発想し、携帯の使い切りお尻洗浄器を世に出した。その背景には「シャワー式便器のない生活にはもう戻れない」といった共通認識が、日本で完全に浸透した時代背景があるといえるだろう。(デイリースポーツ・北村泰介)

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