目指すは世界平和? 元プロボクサーの本格ボクシングバーに行ってみた

 店内のリングで戎岡さんとスパーリングをする女性
 パンチングボールなど練習グッズも充実
 バー「ねばーらんど」を開いた戎岡淳一さん
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 なーんか、うまく行かない。そんなときは馴染みのバーで一杯…ついでに、ボクシングでストレス発散だ!? 兵庫県のJR西明石駅北側にある「ねばーらんど」は、店内にリングやパンチングボール、サンドバッグを備えた、日本唯一という本格ボクシングバー。全国からもリピーターが訪れ、元プロボクサーとスパーリングもできるというバーを訪ねた。

 駅を降りて歩くこと約5分。居酒屋が立ち並ぶ一角に青白いライトに照らされたリングのあるバーに着く。マスターは明石市出身で元プロボクサーの戎岡淳一さん(38)。兄の影響で高校からボクシングを始め、高3でプロデビュー。脅威の粘りと勝負強さで、48戦23勝10KO19敗6分け、最高位はWBC世界ライトフライ級12位まで上った。

 2013年に34歳で引退。その途端、自分が何の職歴もない、ただのフリーターだと気付いた。4カ月間悩んで出したのが、バーを開くことだった。現役時代は酒を1滴も飲まず、味も知らなかったが「もともと人と話をするのが好きで、座右の銘は『一期一会』。ボクシングを通じて出会い、つながれる場になれば」と実際の4分の1スケールのリングを設置。練習器具も備え、「右ストレート」「左フック」「右アッパー」…とオリジナルカクテルもそろえた。強さは…飲んでみてのお楽しみだ。

 だが、客を引き付けるのはそれだけでない。店には、自分に負けそうになったり、道に悩んだりする人が、関東・北陸や沖縄からも訪れる。

 実は戎岡さん自身、「昔は自分に自信がなく、ネガティブ思考の塊だったんです」と打ち明ける。兄2人は地元でも腕っぷしの強さで有名で、常に兄の陰にいた自分を変えたのが、ボクシングだった。「打ち合っている間は紛れもない『僕』がいる。生きている実感が湧いた」。足も速くなく、運動神経も鈍かったが、負けん気だけは強く、現役時代は毎日朝夜に100段の石段を10~20往復した。そうした経験が醸し出す雰囲気ゆえか、客たちも悩みを吐き出した後、「もうちょっと頑張るわ」と元気になって帰って行くのだという。

 「それに、ボクサーってめっちゃ仲が良いんです。死力を尽くして殴り合ってると嘘は付けない。漫画じゃなく、本当に終了のゴングが鳴った瞬間に、心の底から『ありがとう』と抱き合えるんです。そんな関係があると伝えたいな、と」

常連にはボクサー仲間や女性の一人客も少なくない。月2回は来るという建設業の現場監督の女性(36)は「現場は年上の男性も多く、おかしいと思っても自分を殺して『お願いします』と言わなければならない。ストレスがたまるとここに来る。ミットを打ってると無心になってきて、スッキリするんです」と汗をぬぐう。

 大人も子どもも争いを避ける今の日本。でも、人間どこかに闘争本能があって、抑え続けていると、きっと体にも心にも良くない気がする。モヤモヤしたら、思いっきりしばいてみましょうか。あ、でも酔っ払い過ぎての運動は、くれぐれも止めてくださいね。

(まいどなニュース・広畑千春)

◆「ねばーらんど」兵庫県明石市松の内2丁目6-3

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