不適切動画は人生を棒に振る 拡散した第三者もバイトテロ加担者 小川泰平氏が警鐘

 コンビニエンスストアや飲食チェーン店で働くアルバイト店員がSNSに不適切動画を投稿し、拡散する問題が後を絶たない現状について、元神奈川県警刑事で犯罪ジャーナリストの小川泰平氏は12日、デイリースポーツの取材に対し、威力業務妨害罪としての刑法上の罰則と共に、民事訴訟になった際には「人生を棒に振る」可能性があるとして若者に自覚を呼びかけた。

 今年に入ってから、すき屋、セブンイレブン、バーミヤン、ファミリーマート、ビッグエコー、くら寿司…といった店舗で撮影されたと思われるバイト店員による不適切動画が社会問題化している。この“バイトテロ”と称される現象が一種のブームとなり、過去の動画まで発掘されて投稿。例えば、厨房での調理中に中華鍋から上がる炎でタバコに火を付けて吸うバーミヤンの動画は昨年3月に撮影されたものだった。

 被害を被った企業は厳しい措置を検討。くら寿司を運営する「くらコーポーレーション」は魚の切り身をごみ箱に投げ捨て、まな板に戻す動画投稿に関わった2人に対して刑事と民事で法的措置をとる意向を8日に発表。セブン-イレブン・ジャパンも、おでんの具である「しらたき」を口に含んで吐き出した画像を撮影した2人に対しての法的措置を11日に示した。今後も企業によるバイト店員に対する訴訟が続きそうな状況になっている。

 小川氏は「どの動画を見ても刑事責任を追及することはできます。被害届が出れば威力業務妨害罪になることは間違いない。威力業務妨害罪は3年以下の懲役、50万円以下の罰金となりますが、さらに被害者側の企業は、相手がたとえ学生であっても民事訴訟を考えている。そうなった時、動画を撮影してアップした者、映っている実行為者たち本人は、いたずら感覚だったのかもしれないが、一生を棒に振る事態になる」と警鐘を鳴らした。

 “一生を棒に振る”という根拠について、同氏は「学生なら、就活を控えている者がいるかもしれないが、こういう前歴がある者を企業側は採用しません。もともと、1日限定アップの感覚で知人にみせて面白がりたかっただけなのかもしれないが、莫大な賠償請求が予想される民事的責任を伴うことを考えると、バイト先をクビになって終わりどころではなく、本人の今後の人生を左右することになるのだと考えて欲しい」と呼びかけた。

 YouTubeに動画をアップして広告収入を得る「ユーチューバー」が今の時代、子供たちのあこがれの職業となり、若い世代は手軽に使えるスマホで動画を撮影してはSNSに投稿。「いいね」やリツイートの数によって承認欲求を満たそうという行動が日常化している。だが、動画で生計を立てる“プロ”であればその先にあるリスクを想定しているのに対し、後先を考えずに“その場のノリ”によって「愚行」と批判されても仕方がない行動を動画にして投稿することが連鎖反応的に起きている。

 小川氏は「今回の問題によって訴えられる元店員は“見せしめ”になるのかもしれないが、さらに認識しないといけないのは、友人だけに送ったつもりでも、拡散されるということを考えなければならないということ。SNSの特性を考えないとおおごとになる。拡散した者も相手に被害を与えた責任がないとは言えない」と指摘。リツイートして拡散した第三者もまた責任を負わされる可能性があることを訴え、SNS利用者に対して肝に銘じる必要性を説いた。

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