ウイスキー「山崎」が品薄になった背景とは?ハイボールブームと反比例…希少品は1杯2万3000円も

 サントリーのウイスキー「山崎」が世界的な人気ブランドとなり、飲食店や酒類販売店で手に入りづらくなっている。その実態を街に出て検証した。

 東京・新宿の老舗バー。メニューに「山崎」はあった。さっそく注文した。スタッフが「ないかもしれません。確認してみます」とバーテンダーに確かめると、「ありません」と即答が返ってきた。

 いつから品切れなのかと尋ねると、「今年から」という。「大人のお酒に憧れる若い女性にも人気がありました」という「山崎」だけでなく、「マッサンが話題になった頃はニッカがなくなりました」とも。「マッサン」とはニッカウヰスキーの創業者をモデルとした2015年のNHK連続ドラマ小説のこと。ただ、「山崎」に関しては一過性のブームだけではなかった。

 「山崎」はウイスキーづくり60周年を記念して1984年に発売された。大阪府三島郡の山崎蒸溜所で生産され、海外では03年に世界的な酒類品評会「インターナショナル・スピリッツ・チャレンジ」で「山崎12年」が金賞を受賞して以降、各コンペティションで高い評価を得ている。

 「日本を代表するシングルモルトウイスキーと考えております。山崎蒸溜所の見学者に占める外国の方の割合もここ5年で約3倍となっており、アジアの方も含め評価いただいていると感じております」。サントリーの担当者は説明した。

 その人気にも関わらず、いや、その人気ゆえに品薄になった背景を探った。国産ウイスキーの消費量はバブル期から下降して00年代半ばごろまで落ち込んでいたが、ハイボールの再評価ブームで、ここ約10年はV字回復。同社は「ビールやチューハイのように若い人が食中に飲むお酒にしたかった。『角瓶』というブランドでハイボールを訴求し、ジョッキで飲むスタイルを定着させたことでムーブメントを起こせたと考えている」という。

 一方、原酒の量が供給に追いつかない課題も出てきた。同社は「製造設備や貯蔵庫の増強を進めることで、将来の需要に応えられるよう努力しています」としつつ、「できる限りの設備投資は行っていますが、ウイスキーは熟成に時間を要するため、蒸溜後、すぐに市場に供給できるものではありません。将来供給できる量は一概にはお伝えできません」と慎重に回答した。

 「山崎」を都内で探し求めた末、とある銀座のバーにたどり着いた。チャージ料は別に、「山崎12年」がショットで920円。テイスティングで香りを楽しみながらストレートで口に含んだ後、ロックでいただいた。芳醇(ほうじゅん)な香りが…とかなんとか書きたいところだが、日頃、ハイボールしか飲まない記者には正直、その奥深さが分からない。強いて言えば、アルコールに弱い自分が悪酔いしなかったのは「いい酒」だからか。

 同店で最も高価な「山崎18年ミズナラ」はワンショットが2万3000円。当初、10万円で売り出されたボトルはネットで高騰して1本が50万円以上に。16日現在、確認すると少し安くなっても1本が40万円台。山崎ファン垂涎の希少ブランドゆえ、2万3000円の1杯を注文する人は少なくないという。

 中国の「独身の日(11月11日)」でのネット通販で、「山崎」とは別の日本の高級ウイスキーが数秒で完売したという報道があった。同店のスタッフは「中国だけでなく、インドや韓国などアジア各国から、さらにフランスなど欧州やカナダなど世界各地からお客様が来店されました。『日本で飲むのなら山崎』という方が多いです」と証言する。

 カウンターには「山崎」を味わう中高年の紳士たち。希少なウイスキーが飲める限られた空間で至福の時を過ごすには、琥珀(こはく)色の1杯にかけるそれなりの労力と情熱が必要となりそうだ。(デイリースポーツ・北村泰介)

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