高齢者の「かくれ脱水」に懸念…切実な悩み「オネショ怖くて水が飲めない」

高齢者にはこまめな水分補給が必要だ(写真はイメージ)
啓発ポスターと飲料=都内
セミナーで熱中症を学ぶ参加者ら=都内
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 記録的な猛暑が続く中、本人や周囲も気づかないまま脱水状態に陥る高齢者の「かくれ脱水」が懸念されている。医療や福祉の専門家らによって構成される「教えて!『かくれ脱水』委員会」はこのほど、全国の高齢者(65歳以上)、その年代の親を持つ子世代、介護従事者の各516人(計1548人)を対象にした調査結果を都内で発表。高齢者の6割以上が「水分不足」であると指摘した。

 食事に含まれる水分以外で1日に必要な水分量は1000~1500ミリリットルとされるが、摂取水分が1000ミリリットル未満という高齢者は61・8%。その子供世代となる30~40代の男女のうち「親に水分補給を勧めても飲まなかったことがある」という人は28・6%と、3割近くが親の“拒水”を経験していた。

 高齢者の19・8%は「水分補給を控えたことがある」とし、そのうちの77・7%は「トイレが心配だから」を理由に挙げた。続いて多かったのは「喉の渇きを感じていなかったから」(25・2%)で、同委員会は「高齢者は加齢とともに口渇中枢の機能が下がる。体液が減少しても喉の渇きを自覚しにくくなり、水分補給が遅れがちになってしまう」と注意を促した。

 また、介護従事者の90・6%が「水分補給の介助は難しい」と回答。理由は「本人に水分補給の意思がない」(86・7%)が最多で、「水分補給を拒否される」(60・6%)が続く。その対策として「ゼリー」の摂取を勧めているという。

 都内に住む80代男性はデイリースポーツの取材に対し、周囲から「水を飲め」と言われることに時代の変遷を痛感すると語った。

 「昔は夏だからといって、水を飲めとは言われなかった。むしろ体がバテるからと、水分を控えたくらいです」。そう振り返る男性は「今、夏の暑い日に外を歩くなと言われますが、私の若い頃には会社の先輩や上司から『暑い時間帯に外を歩け』と勧められた。日光浴のように、太陽の光を浴びた方が健康にいいと思われていたのです。今では考えられないことですが、熱中症なんて言葉は聞いたことがありませんでしたから」と証言した。

 「トイレが心配で水が飲めない」ということについても、男性は身につまされるという。「寝る前に水を飲むと(尿を)出そうかどうしようかと迷う夢を見て、入眠後3時間くらいで目が覚めて便所に行く。今はその段階なのでいいが、さらにオシッコをしている夢を見るようになると、本当に漏らしていそうで怖い。それで寝る前の水分補給は控えています」と明かした。

 オネショをしても水分補給を優先すべきなのか。紙おむつをしてででも、就寝前には水を飲んだ方がいいのか。悩ましい問題だ。

 「昭和30~40年代頃と今とでは暑さの質が違う。クーラーがなくても、会社では大きな氷をタライに入れておき、休憩の時に頭を近づけて涼んだ。あとは扇風機。そのくらいで暑さはしのげた。水は喫茶店で飲むくらいで、持ち歩くことはなかった。今は街が焼けるように暑い」。80代男性は隔世の感に浸りながらペットボトルの水を喉に流し込んだ。(デイリースポーツ・北村泰介)

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