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猫人気の背景に“お魚くわえたドラ猫”がいなくなった時代

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 夏といえば、一昔前は「怪談」がつきものだった。怖い話に登場する動物の代表格は猫。“化け猫”や“怪猫”であり、楳図かずお氏の漫画においては恐怖の対象(猫面)や、霊感を持つ存在(猫目小僧)などとして描かれてきた。ところが、今や猫はペットの中でも人間に最も身近な“家族”と認識され、もはや“ブーム”ではなく生活に根付いている。この夏、怪談でなく、「猫がいる生活」の背景を探ってみた。

 今年、「家にゃん~猫とじゃれあう おうち時間」(メディアソフト)という書籍が出た。人気猫投稿サイト「アイシアにゃんちゅーぶ(以下、にゃんちゅーぶ)」から200匹以上のカラー写真が掲載されている。「寝顔&寝相」「萌えしぐさ&ポーズ」「変顔&変てこポーズ」「狭いところ大好き」といったテーマに沿って、飼い主がスマホなどで撮影&投稿した猫の素顔や写真からにじむ「猫と自宅で過ごす幸せな時間」が読者を癒やしの世界にいざなう。

 猫人気の背景をこの一冊から探ってみよう。写真の提供元である「にゃんちゅーぶ」事務局の茂出木謙太郎氏に話をうかがった。

 「にゃんちゅーぶ」のウェブサイト立ち上げは2010年頃。茂出木氏は「フェイスブックページの『いいね!』が5万1000人。『~ちゅーぶ』というくらいですから、元々は動画を募集していた。子猫は動画でも面白いんですけど、大人になるとゴロゴロしているだけで動画だと無駄に長尺になる。でも写真だと寝てる姿だけで楽しい。それで写真と動画の両方があり、今回は書籍化する前提で飼い主さんから写真をご投稿いただいた。私の猫も投稿しています」と経緯を語る。

 一般社団法人ペットフード協会の「全国犬猫飼育実態調査」によると、2016年は犬が987万8000頭、猫が984万7000頭。犬は保健所に登録するので正確な数が分かるが、日本の猫は登録制でないので正確な頭数が分からず、エサの消費量などで推定している。昨年、初めて1000万頭を切った犬は減少傾向で、猫はほぼ横ばい。いずれ犬の頭数を逆転することも予想されている。

 茂出木氏はその背景を分析した。「犬は散歩に連れていかないといけないが、猫はその必要がなく、世話もかからない。人間ぽいというか、自分の世界観があって、始終、人間に構ったり遊んでもらいたいとは思っていない。そんな大人の付き合いや、いい感じの距離感が猫にはある。犬好きの人からするとそこが物足りないところでもあるが、夫婦で共働きの家庭では、猫の方が遊んであげる時間が少なくていいし、それくらいの距離感がちょうどいいのでは」

 そして猫人気の背景には、アニメ版「サザエさん」のオープニング曲でおなじみの“お魚くわえたドラ猫”が街から消えた時代もある。人間に飼われるのは犬が狩猟時代からだが、猫は農耕時代からだ。穀物を食べず、逆にその穀物を狙うネズミを退治する存在だった。そんな“猫の野性”は「家庭の台所から魚を失敬してサザエさんに追いかけられる」という“昭和の日常風景”とともに消えていきつつあるようだ。

 「猫の立ち位置も変わったのかなと。かつての“化け猫”が、いつのまにか“ドラえもん”とか、かわいがられる対象になった。今、『猫が怖い』という若い人はあまりいない気がするが、年配の人では猫嫌いもおられる。鼠を食べたり、ゴミ箱をあさっている様子が嫌われる要因だったのが、野良猫もいなくなって、そういうシーンを見ない。“お魚くわえたドラ猫”は若い人にはビジュアル的に浮かばないのだと思います」(茂出木氏)

 猫から人の世の移り変わりも見えてくる。(デイリースポーツ・北村泰介)

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