全日本プロレス21歳レスラー死去、事故の巡業バス運転手は外部委託、死因は敗血症、発表「小出しにするつもりなかった」
全日本プロレスが12日、都内で会見を行った。所属プロレスラーの長尾一大心(ながお・たいしん)さんが5月31日に巡業バスとの接触事故が原因で、今月7日に21歳で死去したことを受け、その経過と再発防止策を報告した。福田剛紀社長(59)、十枝利樹取締役(65)が出席した。
長尾さんは今月6日に容体が急変した。死因が敗血症であること、運転手は外部委託であったこと、火葬が10日に神奈川県内で行われたことが、新たに報告された。葬儀の日時は未定。事故原因は警察で捜査中とし、詳しい状況は明かせない、と説明された。
福田社長は「起きてはいけなかったこと」と鎮痛な面持ちで語った。再発防止策として、巡業の度、社有バスの運転手2人を外部委託していたことを廃止。社有バスの運行を取りやめ、外部バス運行会社に委託した。バスの乗降時の安全確認を徹底させると報告した。
事故に関わった運転手は約2年前から全日本の巡業に参加。担当警察署からの連絡によると、運転手は警察署の呼び出しに応じながら、事情聴取が進んでいる状況という。
長尾さんの事故は5月31日、横浜市内の全日本プロレス道場から巡業に出発する際に発生。乗車していた選手の要請で救急搬送された。長尾さんは腹部圧迫による外傷性ショックのため内臓が損傷し、手術は肝臓を皮切りに繰り返され、集中治療室(ICU)での治療が続いた。十枝取締役は医師からの見通しが厳しいと、長尾さんの両親から説明を受けたといい、亡くなるまで明確な意識疎通を行う状態には至らなかったという。
7月に全日本選手、スタッフが見舞った際、ファンからの激励メッセージを本人に伝えた。十枝取締役は「個人的な感想では、反応してくれたように感じた」と目を潤ませながら振り返った。
団体は5月31日に長尾さんの6・1仙台大会欠場を発表。6月7日にバスと接触、同21日にバスが巡業バスであること及びICU入院中で重体であることを発表。7月22日に選手・スタッフが面会を行い、ファンからのメッセージ、千羽鶴を長尾さんの両親に伝えたことがリリースされた。
発表内容が次第に付け加えられていく点が、ファンの間で不信感を生み出しかねないことについて、福田社長は「小出しにしたつもりはない。治ると信じていた。会見を定期的に開く必要を感じなかった」と語った。結果的に段階的な発表になった点については「理由は分からない。深く考えていなかった」と答えた。
長尾さんの両親は、火葬の際に全日本の選手と対面。十枝取締役は「長尾選手のことを忘れないでほしい、というメッセージをいただきました」と語った。9・15後楽園ホールでは長尾さんの追悼式、献花台を設置する。10月29日に長尾さんの故郷、北海道・釧路市で予定される興行を、追悼大会とする見込みだという。
十枝取締役は「長尾選手は全日本の選手、フリー、外国人選手の誰からも愛されていました」と悼んだ。そして「我々は気持ちの整理がついていないが、ご両親は我々以上にご心痛の中にある。我々は長尾選手のスピリッツを胸に選手、スタッフが進んでまいります。長尾選手のことを忘れないでほしい。ご冥福を深くお祈り申し上げます」と時折声を詰まらせながら話した。




