難聴ボクサーがデビュー戦白星 レフェリーは手話で合図 好戦的スタイルでダウンも奪取 京大卒「私の経験を還元できたら」

 4R、岡森祐太(右)の右フックが福嶋滉平をとらえる(撮影・持木克友)
 判定で福嶋滉平を破りデビュー戦で勝利を収めた岡森祐太(撮影・持木克友)
 岡森祐太にセコンドもジェスチャーでアドバイスする(撮影・持木克友)
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 「ボクシング・4回戦」(3日、後楽園ホール)

 生まれつき耳が聞こえづらい「感音性難聴」を抱える岡森祐太(31)=真正=がプロデビューした。スーパーバンタム級4回戦で、同じデビュー戦の福嶋滉平(竹原慎二&畑山隆則)と対戦。2-1の判定で勝利した。昨年8月のプロテストに合格していた。

 ボクシングの聖地で念願のリングに立った。10センチも長身の相手のふところに入り、好戦的な試合を見せた岡森は、3回に左ショートでダウンも奪取。ジャッジは3者とも1ポイント差で2人が岡森を支持した。

 セコンドの指示はジェスチャーや口の動きなどで理解するが、試合中の音はほとんど聞こえない。この日は、試合前の説明やゴング10秒前の拍子木の代わりに、レフェリーが手話を使った。ゴングの際には間に割って入って知らせた。

 試合後には「(自分は)うまいボクシングができる人じゃないので、活路を開くには前に出ること(しかない)。前に出続けることができた」と笑顔。レフェリーの指示も「コミュニケーションを取ることができた」と振り返った。

 健聴者とともに過ごした関大第一高で日本拳法に取り組み、京大経済学部に現役合格してボクシングに転向した。現在は一般企業で働きながら二足のわらじを履く。今後については「母校(京大)の指導の手伝いを引き続きできれば」と語り、2戦目を行わず引退する可能性もあるという。自身に続き耳の不自由な選手が出てきた時には「私の経験を還元できたら」と話した。

 日本で聴覚障害のあるプロボクサーは、映画「ケイコ 目を澄ませて」(2022年)のモデルとなった女子の小笠原恵子が13年までリングに立った。キックボクシングでも、郷州征宜がK-1で活躍。野球では日本ハムなどで「サイレントK」と呼ばれた石井裕也がおり、陸上男子円盤投げの湯上剛輝(トヨタ自動車)は、元日本記録保持者だった。

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