重岡銀次朗 因縁にKOで兄弟同時王座統一 1月バッティングで無効試合→研究重ね変則的な動きに対応
「ボクシング・IBF世界ミニマム級王座統一戦」(7日、大田区総合体育館)
兄弟同時王座統一だ。ボクシングの世界ミニマム級ダブル王座統一戦が行われ、IBF暫定王者の重岡銀次朗(23)=ワタナベ=が正規王者のダニエル・バラダレス(メキシコ)に5回2分15秒TKO勝ちした。銀次朗の兄でWBC暫定王者の重岡優大(26)=ワタナベ=も正規王者のパンヤ・プラダブシー(タイ)に3-0で判定勝ち。そろって正規王者となり、初防衛に成功した。
この瞬間のために苦しい練習に耐えてきた。悲願の正規王者となった銀次朗はコーナーを駆け上がると、ホッと息を吐いた。笑顔はない。因縁のバラダレスに5回、上下の連打でTKO勝利。「正規チャンピオンのベルトのために15年間、お兄ちゃんと2人で頑張ってきた。何が何でも勝たないといけない試合で、そのプレッシャーがあった。みんなの悔しい思いを返せたことが一番よかった」と安堵(あんど)感をにじませた。
4月の暫定王座獲得から6カ月。打倒バラダレスへ入念な対策を積んできた。1月の世界戦では相手のバッティングで3回途中無効試合に。リングで涙を流したが、相手のことはインプットした。「右と頭が同時に飛んでくる」。
その対策として、バラダレスがサウスポーと戦っているDVDを見て研究。パンチを出す時の足の踏み出し方を意識して打ち込む練習を、スパーリングで行ってきた。
その成果はすぐに出た。1回、変則的な動きに冷静に対応。左でダウンを奪った。この回、右側頭部に偶然のバッティングを受け、金髪に血がにじんだが、2回以降、左ボディーを有効に使うと、5回はロープ際に追い込み、レフェリーストップで決着をつけた。
肉体的にも進化していた。7月中旬、長年の蓄積疲労が影響して左足を痛め、8月予定のバラダレス戦が延期になった。それでも「走れない中でもできることはある」。プールトレで可動域と心肺機能を強化し、基礎体力を高めた。
兄思いの弟は「勝った時も次の兄ちゃんのこと考えていた」という。喜びに浸ることなく、試合後は兄のセコンドにつき、アドバイスを送った銀次朗。兄弟同日王座統一が達成された瞬間、力強く拳を握り、二重の喜びをかみしめた。
◆重岡銀次朗(しげおか・ぎんじろう)1999年10月18日生まれ。熊本市出身。2歳上の兄・優大とともに幼少期から空手を始め、小学4年でボクシング転向。開新高時代には高校5冠。卒業後、ワタナベジムに入門して18年9月にプロデビュー。19年7月に4戦目でWBOアジア・パシフィック・ミニマム級王座。23年4月にIBF世界ミニマム級暫定王座。身長152センチ。左ボクサーファイター。