井岡一翔 涙の王座返り咲き 大麻騒動も「報われる姿見せたかった」 体重超過フランコに“正義”の鉄鎚
「ボクシング・WBA世界スーパーフライ級タイトルマッチ」(24日、大田区総合体育館)
井岡一翔(34)=志成=が、体重超過で王座を剥奪されたジョシュア・フランコ(27)=米国=に判定勝ちし、新王者となった。昨年12月の王座統一戦では0-1の引き分けに終わったが、今回のダイレクトリマッチでは3-0の“完勝”だった。大麻騒動や体重超過などドタバタがあった今回の世界戦。そんな中で王座に返り咲いた34歳は、これからも新たな戦いに挑み続ける。
12回を戦い抜くと井岡はコーナーに上がり両拳を突き上げた。「やったぞ!」。元4階級制覇王者が、フランコとの2階級ほどの体重超過のハンディを克服。3-0の判定で王座に返り咲くと、目を潤ませ感極まった。
「この瞬間を必ず見せたかったし、見せられると思っていました。必ず報われる姿を見せたかった。拳を交えて戦い抜いて僕も満足しています」。会場に招待した子どもたちの期待に応え、充実感に浸った。
2つのアクシデントを乗り越えた。王者の体重超過問題が勃発。この日の再計量では58・0キロでパスしたフランコだったが、会場入り後の体重は60・2キロ。一方、井岡の会場入り後の体重は57・5キロと2階級ほどの体格差。それでも1回からボディー攻撃を中心に有効打を重ね、9回には打ってこいとばかりに舌を出して挑発。前回対戦とは違い試合を支配したのは井岡だった。
「去年の大みそかは僕が求めてる結果ではありませんでした。また王者に返り咲くことができました。ありがとうございました」と涙声で絶叫した。
進退を懸けた大一番。3日前の21日には心を打ち砕かれそうになったが、目の前の勝利のみに目を向けた。昨年大みそかのフランコ戦のドーピング検査で大麻成分が検出されたことを発表されたが、「自分自身に嘘はついていない」と潔白を主張。周囲の雑音をシャットアウトし、翌22日も隠れることなく志成ジムで動じることなく調整に励んだ。
「フランコ選手は強く、グレートなチャンピオンが来てくれた。こうして拳を交えて戦い尽くして満足している」。34歳になっても飽くなき探究心は変わらない。「勝てたことが一番。今後も挑み続ける姿をお見せしたい」。世界戦日本人最多の21勝ボクサーはまだまだ己に磨きをかけ、ボクシング人生を歩んでいく。
◆井岡一翔(いおか・かずと)1989年3月24日、堺市出身。興国高で高校6冠。東農大を中退し、2009年4月にプロデビュー。11年2月にWBC世界ミニマム級王座に就き、ライトフライ級、フライ級の世界王者に。17年末に引退表明したが、翌年復帰。19年にWBO世界スーパーフライ級王座を獲得し、日本男子初の世界4階級制覇。22年12月のWBA・WBO同級王座統一戦はフランコと引き分け、23年2月にWBO王座を返上。右ボクサーファイター。家族は夫人と2男。



