エンジンがうなり、タイヤが路面をつかむ。富士の裾野を、時速300キロのマシンが駆け抜ける。わずかな判断の差が勝敗を分ける世界に、ただ一人の女性が挑んでいる。野田樹潤(じゅじゅ)、20歳。速さを追い求め、海を渡り、幾つもの壁を越えてきた。今もなお、女性であるがゆえの壁と向き合いながら、ハンドルを握る。悔しさを力に変え、まだ誰も示したことのない道の先へ、走り続ける。

全日本スーパーフォーミュラ選手権第3戦。スタート直後、第1コーナーで複数のマシンが接触、野田樹潤は混乱を避けて順位を上げた=7月19日、富士スピードウェイ(ⓒJRP)
全日本スーパーフォーミュラ選手権第3戦。スタート直後、第1コーナーで複数のマシンが接触、野田樹潤は混乱を避けて順位を上げた=7月19日、富士スピードウェイ(ⓒJRP)

最高時速300キロ

 静岡・富士スピードウェイ。耳をつんざくような爆音を響かせ、24台のマシンが発進する。第1コーナーで激しい攻防が繰り広げられ、接触した数台がスピン。後方からスタートした野田は、素早く巧みなハンドル操作で間隙(かんげき)を縫い、一気に順位を上げた。

 国内最高峰の自動車レース、全日本スーパーフォーミュラ選手権。快調な滑り出しに期待が膨らんだが、10周目に入った直後に後続車との接触でホイールが破損。無念の途中棄権に終わった。