長谷川穂積×山中慎介(1)リベンジに燃える盟友の本音に迫る…勝算は?

 デイリースポーツのボクシング評論「拳心論」で健筆を振るう元世界3階級制覇王者、長谷川穂積氏(37)が、昨年8月に13度目の防衛戦で敗れた前WBC世界バンタム級王者、山中慎介(35)=帝拳=のリベンジへかける思いを聞いた。山中は3月1日、東京・両国国技館で同級王者ルイス・ネリ(23)=メキシコ=にダイレクト再戦で挑戦する。長谷川氏は“仮想ネリ”としてマスボクシング(寸止め)のパートナーも務めた。盟友の本音トークを3回にわたってお届けする。

  ◇  ◇

 長谷川「『はじめてのおつかい』=山中の長男・豪祐君(5)長女・梨理乃ちゃん(3)がおつかいに初挑戦した新春放送のバラエティ番組=見たよ。よかったなあ。山中君の(子供を心配する)あんな一面見たら、試合を見る人もまた違う感情が入るよな」

 山中「試合ではもっと自信満々の顔してると思うんですけど…」

 長谷川「ネリ戦が決まった感想は」

 山中「8月に負けて、それもただ負けただけじゃなくていろいろと問題があった試合ではあると思うけど、現役続行は決意していたんです。次の相手がネリじゃなくても、あの試合では終われないという発言をしていたんですけど、正直言うと99%ネリのことしか考えられなかったです」

 長谷川「3月1日、両国と発表された時、会見ではいつもあるベルトがなかったよね」

 山中「毎回そうなんですけど、改めて発表会見をした時には、また気持ちが引き締まりますよね。ただ、そこ(ベルト)にはめちゃめちゃ違和感がありました。悔しさというより、改めて挑戦者やなって気持ちに。横に岩佐君(亮佑=IBF世界スーパーバンタム級王者)がいて、あれがIBFやったからいいものの、WBCのベルトやったらこっちへこうやって(引き寄せて)いたかも(笑)。(在位)5年9カ月やらしてもらったんで。長谷川さんも違和感ありましたよね」

 長谷川「あったなあ。なんか変な感じ」

 山中「(王者として防衛に)挑戦していたつもりやったけど、負けて改めて挑戦者になったら、ちょっと違いました」

 長谷川「今度はネリが王者になって挑戦するんだけど、前の試合と今回の試合でネリの評価は変わった?」

 山中「前より全然上ですね。王者になったから」

 長谷川「自信はつくからなあ」

 山中「もう一回戦いたい、借りを返したいという気持ちになったのは(前回)構え合った感覚が悪くなかったんで。だからこそ次やってやるという気持ちが強かった」

 長谷川「試合まで40何日あるとして、正直確率は何%?」

 山中「(長い沈黙の後に)周りの意見は別にして、半々かと」

 長谷川「すごいリアル!」

 山中「いつもそうなんですけど、試合が決まって2カ月くらい前は不安から始まるんです。試合が近づくごとにその確率を上げていく」

 長谷川「この時点で100%という選手もいるけど、ほとんどはそう思いたいから。50%というのはすごいリアル。ここから55、60、70%ってコンディションをつくっていって試合前に100%近くまで上げていくのが理想。逆にネリは(自信が)100%やと思う。なめているところもあると思うし、いろんな問題があってクリアした…いや、実際はしてないけど、前と同じ状況でくるから。だからダイレクトの再戦は難しい」

 山中「今までの確率では、ほとんど王者になった選手が(前王者に)勝ってますよね」

 長谷川「僕も正直、厳しい戦いやなって思ってて、よくて50%50%と思っていた。でも、今日マス(ボクシング)をさせてもらうためにネリ戦のビデオを見て、これは勝てるなって思ってん。6対4か、6・5対3・5くらいで。あの試合を生で見た時には、ネリはうまくパンチ殺しているなとか、戦い方考えてやっているなと思っていたけど、ビデオを見たら山中君のパンチが全然当たっている。肉眼では見えなかったけど、こんなに当たってるんやって思って」

 山中「(パンチは)浅かったですけどね」

 長谷川「浅かったけど、そこを工夫を重ねたら普通に勝てるなって今は思っていて。今日マスさせてもらったところでも、ディフェンスもうまくなっているし、短期間でしっかり勉強しているし、これが試合までにほぼパーフェクトになれば、問題なく勝てるんじゃないかなって」

 山中「これからスパーリングで出していかないといけないですね。(敗因は)何と言っても自分のディフェンスに問題があった。攻撃に関しては、そんなに変える必要はないし変えることはできない。でも、ディフェンスは(体が)浮いて死なないのが絶対大事。かと言って防御ばかり考えてもダメだと」

 長谷川「再戦の難しさはそこ。KOで負けて前のパンチをもらわないようにディフェンスを改善した選手って、パンチはもらわず判定まで行くけど判定負けするパターンがある。再戦で多い」

 山中「多いですね。そこ(攻防の)の融合ですよね」

 長谷川「今日の練習を見たら全然問題ないよ。マスやのに左が固くてびっくりしたわ。左を当てるのは右がうまいから。今までの相手ならそれで焦って出てくるところに左が当たって自分のペースでやれていたけど、ネリはいい意味で何も考えずに打ってくるから、びっくりしてしまったところが前はあったんじゃないのかな。マスで(ネリの)まねをしたけど、僕は(山中の左が)怖くて打たれへん。それをネリは試合であんな大振りをやるんやから。山中君のパンチを一発でももらったら怖くてできへんけど、それを試合でやるんやもん」

 山中「(今は)悪かった部分がわかっているけど、あの時は来られたらどうしようって棒立ちになってしまった。冷静が売りやのに慌ててしまった。むきになってロープ際で力み過ぎてバランスを崩してダメージになった部分があるのかな」

 長谷川「逆転を狙っちゃうねんな」

 山中「タイミングは合ってたんです。だからこそそこ(打ち合う場所)に居すぎた。これだけ防衛して成長しているはずやのに」

 長谷川「今までああいう相手はおらんかったからやろう。打って打ってっていう」

 山中「うまかったというのはあります。詰め方や回転も効くし。(敗因が)明らかだったので(敗戦は)受け入れられましたね。次は挑戦者やという気持ちにはなっているんですが、心の中では言い訳はあるんです。言い訳がなくなったら現役は終わりやなって思ってて。でも、負けをしっかりと受け入れたから、挑戦者としての強い気持ちを持てるというのはあるんです」(以下、2に続く)

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