キラー・カーンさん「長州だけは許せない」 突然引退の真相明かす…今は居酒屋店を経営

 1980年代に悪役レスラーとして国内外のマットで大暴れした”蒙古の怪人”キラー・カーンさん(本名・小沢正志=72)を覚えているだろうか。現在は東京・新宿で居酒屋店を経営。ジャイアント馬場もうなった自慢の喉と、あの尾崎豊も愛した名物カレーライスが評判だ。運が良ければ、昭和のプロレス界の裏話も聞けるかもしれない。

 JR山手線・新大久保駅から徒歩1分。韓国料理店が密集する一角にキラーカーンの店「居酒屋カンちゃん」はある。開店1時間前に店をのぞくと、日本人離れした大男が歌のレッスンをしていた。

♪辛いときでも口には出さぬ♪いえぬ辛さがお酒を飲ます~

 その美声はジャイアント馬場が認め、立川談志の仲介で三橋美智也門下として歌手デビューしただけのことはある。87年に引退後、スナック、ちゃんこ鍋、歌謡居酒屋などを経て、2016年9月に現在の店をオープン。自慢のメニューがあの尾崎豊も通い、愛したカレーライスだ。

 「最初に出したスナックでまかないで出したものなんだけど、気に入ってくれ、来る度に頼んでくれていた。いまでも人気メニューですよ」

 店内には尾崎さんをはじめ、“人間山脈”アンドレ・ザ・ジャイアントら往年の名レスラーとの名勝負写真などが飾られているが、穏やかな表情もここまで。カーンさんはマイクを置くといきなり、昭和のプロレス界の暴露話を始めた。

 70年に大相撲を廃業し、翌71年に日本プロレスへと入門したが、当時の団体は分裂や離散集合の繰り返し。アントニオ猪木、坂口征二、長州力との確執もあり、87年に突然引退した。その背景にあったのは…。

 「長州だけは許せない。あいつと同じ職業ということに嫌気がさしたんだ。私の失敗は馬場さんではなくアントニオを選んだこと」

 日本プロレス界の実態を事細かに説明してくれたが、これ以上は書けないような話ばかり。知りたければ、この店に行くしかないようだ。

 もちろん、輝いた瞬間もあった。両手を広げ、奇声を発しながら相手の頸動脈を叩く「モンゴリアン・チョップ」は特に米国で受けた。

 「リングでの横暴ぶりでお客からカミソリで足を切られたり、時にはピストルを向けられたこともあったが、本物と認められた証拠。フロリダでなんか、連日満員でヒールでも凄い歓声で喜んでくれた。女にもモテたよ。カウンターで横に座った彼女が妻になった。一目惚れですよ」

 その一方で現在のプロレス界を「プロではない。迫力がない」とバッサリ切り捨てた。

 新潟出身。母子家庭で育てられ、母親からは「人を信用して嘘をつかずに生きろ」と言われて来たが、人に「裏切られ続けた人生だった」と恨み節。母親は6年前に96才で他界し、何もしてあげられなかったことを悔やんで涙ぐんだ。

 アメリカに残した妻子とも36年間会っていないという。今年5月には初孫ができるそうで「この曲でヒットを出して孫に会いに行きたい」と夢を語った。本気か、冗談か。優しい笑顔が印象に残った。

♪辛いときでも口には出さぬ♪いえぬ辛さがお酒を飲ます~

 インタビューが終わる開店5時には広い店内は満員に。「うまく!安く!多く!がモットー。中途半端は嫌いです。プロレスと同じでお客様が喜ぶパフォーマンスを大事に~」と店長の顔になっていた。

(まいどなニュース特約・吉見 健明)

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