マンジャロは糖尿病の薬 美容目的に使用すれば国が承認していない「適応外使用」→危険極まりない行為に
2型糖尿病の患者さんにとって希望の光ともいえる画期的な新薬がいま、美容目的の不適切な使用によって深刻な健康被害を引き起こしています。SNSやマスコミで「痩せ薬」として話題の注射薬「マンジャロ」。すでに厚生労働省はダイエットなどの適応外使用に対して「安全性・有効性は充分に検証されていない」と公式に表明しており、日本医師会も警鐘を鳴らしています。私の元にも厚労省や厚生局から、幾度となく注意喚起が届きます。もちろん私はこれら「GLP-1受容体作動薬」を痩せ薬として販売するなど一切していません。
理由は「危険だから」。それにつきます。なぜマンジャロのダイエット目的での使用が危険なのか。「マンジャロ」と「ゼップバウンド」という2つの薬を例に説明します。この二剤は有効成分は同じなのですが、国が承認した適応が異なります。日本ではマンジャロは「2型糖尿病」の治療薬として承認されていますが、ゼップバウンドは「肥満症」の治療薬として承認されています。痩せる目的ならゼップバウンドを使えば良いと思うでしょうが、そうはいきません。
ゼップバウンドが保険適用となるのは、医学的に治療が必要だと医師が判断した「肥満症」の患者さんに限られ、「BMIが35以上」または「BMIが27以上で高血圧など2つ以上の健康障害を持つ」という厳しい基準があります。つまり糖尿病ではない人が美容・ダイエット目的でマンジャロを使用することは、国が承認していない「適応外使用」で、危険極まりない行為です。マンジャロがここまで注目されるのはその画期的な作用と有効性にあります。GIPとGLP-1という2種類のホルモンに働きかけることで非常に高い効果を発揮します。しかも薬の適応外使用の危険性は副作用だけではありません。社会的な大問題も抱えています。以下の3点です。
1.国の副作用被害救済制度の対象外:これが最大の危険性です。通常、承認された医薬品を正しく使用して後遺症が残る、死亡するなどの重篤な健康被害が生じた場合、国が医療費や障害年金などを補償する制度があります。しかし適応外使用による健康被害ではこの制度を一切利用できません。万が一の事態が起きても、すべて自己責任となる非常に重いリスクです。
2.医師の管理不在:マンジャロのような強力な薬の処方には、事前に血液検査(腎機能、肝機能、膵臓の数値など)を行い、低用量から投与を開始し、定期的に状態を観察しながら増量していきます。事前検査や経過観察が大切で、オンライン診療やSNS通販など、このプロセスを無視した安易な処方は毒を盛るのと同じです。
3.違法・偽造薬の問題:個人輸入やSNS経由での購入は、法に触れるのみならず、有効成分が入っていない、不衛生な環境で作られている、全く別の偽物である可能性すらあります。
そしてその副作用ですが、比較的多い副作用として、吐き気・嘔吐・下痢・便秘・腹痛・腹部膨満感・消化不良など。重篤な副作用には、急性膵炎・腸閉塞・胆嚢炎・胆石症・低血糖などがあります。特に低血糖は、冷や汗、手が震える、心拍増加など、命の危険すらある重篤な症状です。GLP-1受容体作動薬には以下のような商品がありますが、どれも同じと思ってください。マンジャロ・リベルサス・オゼンピック・トリルシティ・ウゴービ・ゼップバウンドなど。医療機関以外から手に入れる、安易な気持ちで使う、などといった行為は絶対にお控えください!
◆松本浩彦(まつもと・ひろひこ)芦屋市・松本クリニック院長。内科・外科をはじめ「ホーム・ドクター」家庭の総合医を実践している。同志社大学客員教授、日本臍帯プラセンタ学会会長。
