「痩せる薬」として注目される糖尿病治療薬だが、長期的な安全性データはまだ不十分…それよりも!

 近年、糖尿病治療薬であるマンジャロやオゼンピックといったGLP-1受容体作動薬が、その高い減量効果から痩せる薬として注目されています。これらの薬は、もともとは糖尿病の薬として開発されました。血糖降下効果に加え、体重減少効果、さらには心血管疾患リスクの低減や腎臓病の進行抑制効果も報告されており、糖尿病患者さんの健康寿命の延伸に大きく貢献しています。

 少し前ですが、世界中でこの薬が美容目的や肥満の治療で使われたことで供給不足に陥り、本来の適応である糖尿病患者さんに使えない時期がありました。最近は供給も回復し代替薬がないわけではないですが、やはり必要な方にベストな薬を使いたいというのが我々医療者の本音です。

 また、どんな薬にも副作用はつきものです。吐き気や便秘、下痢といった消化器症状は比較的多く、稀ですが、膵炎や胆石症を起こすこともあります。ダイエットのためなら少しくらい我慢できると思うかもしれませんが、糖尿病ではない方が体重減少目的でこれらの薬を使った場合の長期的な安全性データはまだ十分にありません。将来的な未知のリスクも懸念されます。痩せたい気持ちはよく理解できますが、本当に大切なのは安易にこれらの薬を使うのではなく、健康的かつ無理なく体重を管理していくことです。健康的なダイエットの基本は、バランスの取れた食事と適度な運動、そして質の良い睡眠です。

 実際にGLP-1受容体作動薬を使った方からは、ご飯が美味しくなくなったという訴えが時々聞かれます。食いしん坊の私からすれば、これは人生の大きな楽しみを一つ失うことになりますので、私が糖尿病になったとしてもこの薬は使わないかもしれませんね。

 ◆西岡清訓(にしおか・きよのり)兵庫県尼崎市の「にしおか内科クリニック」院長。呼吸器、消化器疾患を中心に一般内科診療などを行っている。

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