5年生存率2~6%の原発不明がん 痛み、違和感で受診必要なケースは?医師が解説 原発巣は肺、膵臓など多数
先日、著名な経済アナリストが原発不明がんで亡くなりました。原発不明がんは、転移がんが見つかっているにもかかわらず、最初にがんが発生した臓器(原発巣)が特定できない病気です。すでに多数の部位に転移が起こっていることが多く、ほとんどが高度進行がんの状態です。生存期間の中央値は6~9カ月、5年生存率は2~6%と極めて予後不良です。
転移が起こりやすい部位にはリンパ節、胸膜、腹膜、肺、肝臓、骨などがあり、それぞれに応じた症状が現れます。たとえば、リンパ節転移では首やわきの下にしこりができ、胸膜や腹膜に転移すると息苦しさやおなかの張りを感じることがあります。肺転移では咳や胸痛、肝転移ではおなかの不快感や腫瘤、骨転移では痛みや骨折、神経圧迫によるしびれや麻痺が生じることもあります。
診断にはCT、MRI、PET-CT、内視鏡検査、腫瘍マーカー、生検などを用いますが、それでも原発臓器を特定できない時に原発不明がんという診断になります。治療は古典的な2種類の抗がん剤を用いることが多いですが、近年ではオプジーボという免疫療法の注射薬が使われることもあります。しかし効果は十分とは言い難く、新しい治療の開発が待たれます。解剖を行うと約70%で原発巣が判明し、肺、膵臓、胆道がんなどが多数を占めます。
このようなニュースが報道されると少しの痛みや違和感でもがんを疑って受診される方が増えるのですが、原発不明がんは人口10万人あたり6人(0.006%)未満とかなり稀なので過度に心配する必要はありません。がんが増え始める50代以上の方で気になる症状が長く続く場合には受診されてもいいかもしれませんね。
◆西岡清訓(にしおか・きよのり)兵庫県尼崎市の「にしおか内科クリニック」院長。呼吸器、消化器疾患を中心に一般内科診療などを行っている。
