【松本浩彦医師】がん細胞が育つまでに危険性を知れれば…生活習慣改善のきっかけに

 ヒトの細胞は、皮膚や内臓や筋肉など、日々コピーされて新しい細胞と置き換わっています。これが新陳代謝です。がんの始まりはこの時にミスコピーされた1個の細胞です。ヒトの体には当然、このがん細胞を消去する免疫システムがあります。

 しかし幾重にも巡らされたセキュリティシステムをすり抜けて、1個のがん細胞が2個、4個、8個と増殖していく確率は、低いとはいえゼロではありません。

 1個のがん細胞が奇跡的に28回分裂すると約3億個のがん細胞の塊となります。この時の大きさが5ミリ。現在の画像診断技術で発見できる最小限のサイズです。この時点で初めてがんと診断され、治療が始まります。

 1個のがん細胞が5ミリに増殖するまでには20年の歳月が必要ですが、5ミリまで育ってしまうと、もう免疫システムでは排除できなくなり、治療しなければ5ミリのがんは2年で1kgになります。

 1個のがん細胞が5ミリまで育つ20年の間に、がんの可能性・危険性を知ることはできないか、それが遺伝子検査なのです。超早期にがんのリスクを知り、治療ではなく予防することが、がん関連遺伝子検査の目的です。がん発症の前段階から活性化してくる、血液中のがん関連遺伝子の発現レベルを測定することで、がん発症のリスクを段階的に評価できます。

 仮に検査で高リスクであることが判ったとしても、悲観することは全くありません。まだがんではない未病の状態なのですから、生活習慣を改善することでリスクをゼロに持っていくことが可能です。がんリスクの遺伝子検査は今の状態を知り、もし危険とわかれば、生活習慣を見直すきっかけにするという意味では、価値のある検査といえます。

 ◆筆者プロフィール 松本浩彦(まつもと・ひろひこ)芦屋市・松本クリニック院長。内科・外科をはじめ「ホーム・ドクター」家庭の総合医を実践している。同志社大学客員教授、日本臍帯プラセンタ学会会長。

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