【松本浩彦医師】「食べてすぐ寝ると牛になる」はむしろオススメ!医師が解説

 食事をした後すぐ横になるのは行儀が悪いので、 そのことを戒める言い伝えです。牛は草を食べた後に、反芻(はんすう)と言って食べたものを口の中に戻して再び噛みなおします。体を横にすると反芻しやすいので、牛は食べた後すぐに横になる習性があることから、例えに使われたのでしょう。

 食べたすぐあとは、軽く体を動かしたり歩いたりしたほうが、健康にもいい。食後は血糖値が上昇するため、休んでしまうと血中の糖がほとんど使われず脂肪として蓄積され結果的に太りやすくなる、という意見もありますが、私の見解は逆です。

 医学的に考えると、食べたあと横になるのはむしろオススメ。食後は、食べ物を消化するために胃腸に血流が集中します。満腹になると眠くなるのも脳の血流量が減るからです。食後に身体を動かすと、血液が筋肉に回ってしまい、胃腸の血流が減って消化能力が落ちます。食べ物をしっかり消化するためには、食後は横になって胃腸のはたらきを助ける方がいいのです。横になる・座る・立つの違いで、消費カロリーはさほど変わらず、太りやすさへの影響はありません。

 ただし食後すぐ本当に眠ってしまうのはNGです。眠ると胃腸の動きが鈍くなり、消化に時間がかかって胃腸の負担を増やします。さらに、体内時計を調整するBMAL1というタンパクは、脂肪を蓄積する働きも持ち、その分泌は深夜2時ごろにピークになります。ヒトの体は夜遅い時間に食事するほど、脂肪を蓄積するようにできているのです。就寝直前に食べると太りやすいという説は本当です。

 池波正太郎氏の時代小説に、江戸時代の剣豪は食後の小一時間、横になるという描写があります。食後すぐ横になるのはマルと言っていいでしょう。

 ◆筆者プロフィール 松本浩彦(まつもと・ひろひこ)芦屋市・松本クリニック院長。内科・外科をはじめ「ホーム・ドクター」家庭の総合医を実践している。同志社大学客員教授、日本臍帯プラセンタ学会会長。

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