発見しにくい肺がん “不安”ある人は胸部CTを

  「町医者の独り言・第20回」

 肺癌(がん)は、組織により様々なタイプがあり、治療方針、予後も変わってきます。大きくわけると非小細胞癌と小細胞癌に分類されます。

 非小細胞癌には、腺癌(約40%)、扁平上皮癌(約30%)、大細胞癌(約5%)があります。非小細胞癌は、早期なら外科治療が施行され、小細胞癌には化学療法、放射線療法が施行され、基本的に手術となることはありません。対して、非小細胞癌は化学療法、放射線療法の有効性は低いとされています。

 喫煙は最も重要な危険因子であり、扁平上皮癌、小細胞癌での関連が強いとされています。非喫煙者に比べて喫煙者が肺癌になるリスクは、男性では4・4倍、女性では2・8倍ほど高く、授動喫煙でも1・3倍リスクが増悪するようです。その他の危険因子として、COPD(慢性閉塞性肺疾患)、アスベスト(石綿)、ラドン、ヒ素などが考えられています。

 悪性腫瘍の中で、男性は肺癌による死亡率が最も高く、女性では大腸癌に次いで2位となっており、男性の方が、肺癌死亡率が高いのが現状です。症状としては、咳嗽(がいそう)、喀痰(かくたん)、血痰、喀血、喘鳴、無気肺、閉塞性肺炎などがありますが、部位によっては早期には症状がない場合が多く、進行して周囲臓器へ浸潤すると症状が認められることがあります。癌の進行とは無関係に生じる症状もあり、癌が産生するホルモン、自己抗体が原因となり、内分泌異常、神経、筋症状などが見られことがあります。小細胞癌でよく見受けられます。

 咳嗽、喀痰、喀血、血痰、癌の随伴症状などがあれば、胸部レントゲン、喀痰細胞診、胸部CTなどを施行し、腫瘍マーカーなどの血液検査も併用します。喀痰細胞診は、癌の存在部位により、陽性率は低いとされており、肺癌が疑わしい場合は、気管支鏡などのカメラを用いて、部位に応じた細胞の採取を施行し確定診断の一助とすることもあります。胸部レントゲンだけでは、発見が困難なことが多く、このことが肺がん治療を困難にしている一因です。

 実際には胸部レントゲンを毎年施行しても肺がんのリスクは軽減することができないとの報告もあります。私の医院でも6ミリ大の早期の肺がんで手術を受け、現在も元気に過ごしている人もおられれば、胸部レントゲンを施行していても、多臓器浸潤の症状で発見され、すでに末期の肺がんで緩和ケアのみ施行された患者さんもおられます。お二人とも確定診断は胸部CTでなされており、胸部レントゲンだけでは、ともに発見ができなかった症例です。

 最近まで、他に2人の患者さんが、肺がんと戦っていましたが、一人の患者さんは、戦いの末、鬼籍に入られました。1ミリ以下の肺がんをレントゲンで見つけることはまず困難ですし、大血管や心臓に隠れて見えない肺がんもたくさん存在します。レントゲンだけでは発見が困難なことが多く、喫煙などで不安を感じている方は、人間ドック等で胸部CTを受けることをお勧めします。

 ◆筆者プロフィール 谷光利昭(たにみつ・としあき)たにみつ内科院長。1969年、大阪府生まれ。93年大阪医科大卒、外科医として三井記念病院、栃木県立がんセンターなどで勤務。06年に兵庫県伊丹市で「たにみつ内科」を開院。地域のホームドクターとして奮闘中。

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