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たかが脱腸、されど脱腸…しっかり治療を

 「町医者コラム・第15回」

 私には息子がいます。彼が、小学3年生だったころ、衝撃的な告白をされました。

 「パパ、金玉三つあるねん!」

 これは精巣腫瘍か…?脳裏に嫌な思いがよぎります。脂汗をかきながら、息子の睾丸を触診しました。他人が見れば、滑稽(こっけい)?に思われた光景かもしれませんが、本人も、私も真剣です。時間により大きさが変化し、臥位で消失します。いろいろ確認したら、一気に顔がほころびました。脱腸です。医学名は「鼡径(そけい)ヘルニア」です。患部がかなり大きく、痛みも出現してきたので、手術の手配をして無事に終了しました。後日談ですが、彼は3歳のころにも「1個金玉が増えた」と告白していたそうですが、私が「気のせいや」と一蹴したと、今も恨み節をタラタラといわれます。身内の診察はするなとは、よく言ったものです。

 脱腸いわゆる鼡径ヘルニアは、手術をしないと治癒しません。以前はヘルニアバンドなどで対処している人を時々見ましたが、それでは完全に治癒することはないのです。鼡径ヘルニアというと、たいしたことがないように思われがちですが、実は命に関わることもあるのです。

 鼡径ヘルニアが、出たり入ったりしているうちはいいのですが、出たまま戻らなくなり、そこから脱出した腸管が腐ってしまうことがあります。嵌頓(かんとん)ヘルニアという危険な状態です。こうなると、命に危険が及ぶことがあります。

 実は、私の両親は2人とも嵌頓ヘルニアの診断で緊急手術をした経験があるのです。両親は自分の鼡径ヘルニアのことを愚息に相談しませんでした。結果、気付いた時には緊急手術という情けなくも危険な状況になってしまいました。そうならないためにも、鼡径ヘルニアといえども、馬鹿にせず、大事になる前に積極的に病院を受診して下さい。

 実は、鼡径ヘルニアには様々な種類があり、手術の術式も様々なんです。解剖の複雑さもあるので、ここで詳細に説明することは控えますが、しっかりとした外科医に手術をしてもらわないと再発などの確率が高くなります。

 現在は腹腔鏡などを使用した手術が行われています。私の知っている範囲ですが、美容的にも、解剖学的にも優れた手術をしている医師が近畿中央病院(兵庫県伊丹市)の外科にいます。三井記念病院の後輩である若杉正樹医師です。彼が行っている臍(へそ)からアプローチする単孔式のヘルニア手術は、術後に傷がほとんど分からないだけではなく、彼に依頼した人は術後良好な経過をたどっています。たかが、脱腸、されど、脱腸。みなさん、注意してくださいね。

 ◆筆者プロフィール

 谷光利昭(たにみつ・としあき)たにみつ内科院長。1969年、大阪府生まれ。93年大阪医科大卒、外科医として三井記念病院、栃木県立がんセンターなどで勤務。06年に兵庫県伊丹市で「たにみつ内科」を開院。地域のホームドクターとして奮闘中。

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