【野球】「監督からです」首を振る先輩投手に出していたウソのサイン 元カープの西山秀二さん

 黄金期の広島で3本柱と呼ばれた北別府学投手、川口和久投手、大野豊投手とバッテリーを組んだことは西山秀二さん(58)にとって「大きな財産」だという。ただ、百戦錬磨のベテラン勢をリードするのは年下の捕手にとって容易なことではなかった。そんな時代でも貫いた捕手としてのこだわり、大先輩に出していたウソのサインを打ち明けた。

 ◇      ◇

 達川光男氏の引退により1993年から正捕手になった西山さんには、強いこだわりがあった。

 広島の黄金期を支え3本柱と呼ばれた先輩投手らをリードすることになったが、「上の人から首を振られたからと言って、サインを変える気はなかった。意地でも変えるかっていうのがあった」と当時の信念を明かす。

 初めてコンビを組んだ時に「好きにサインを出してこい」と言ってくれた大野投手はまれな存在で、経験豊富な先輩投手は、年下の捕手に対して首を振ってくることが多かったという。

 「ペーさん(北別府投手)もそうやし、川口さんもよく首を振ってきたけど、振られても絶対、2、3回ぐらいは同じのを出し続けましたね。もうええ加減にせえ、変えろという感じになったら、しょうがないから変えましたけど、簡単には変えなかった」

 先輩投手に対して、そこまで強気な態度に出た背景には、打者にもっとも近い場所にいる自分が、もっとも打者の動きをつぶさに観察している自負があったからだった。

 「ペーさんはバッターの動きを見て、自分である程度(組み立てを)考えてるから、ここへ投げたから次はここというイメージなんですけど、一番間近で見てる僕からすると、まだ外へイメージがあるから、もう1球(内へ)いかなアカンとなる。一番感じるところがあるんですよ。でもペーさんはぺーさんで意地があるから首を振る」

 いかんともしがたい状況に陥ったとき、西山さんが使っていた必殺技がある。

 「監督からの指示だというサインがあるんです。最後は勝手に“監督からですよ”ってサインを出してましたね。それが出たら、ピッチャーは有無を言わずに従わないとアカンので。首を振られて頭にきてる時は、“監督から”ってサインを結構、勝手に出して言うことを聞いてもらってましたね」

 悪びれることなく振り返った。ウソで出した“監督からのサイン”がバレたことはなかったという。

 「監督からのサインだって出したら、向こうもすぐにうなずいて投げてきますから。その後で監督になぜ、あの場面であの球なんですか、なんて聞くピッチャーはいませんから」

 そうしたしたたかさも捕手には必要な素養なのだろう。

 コンビを組むごとに先輩投手との息は合ってきた。「試合の中で僕を教育してくれていた」という北別府さんは、その後、首を振ることがなくなっていったという。川口投手については「首をいっぱい振ることが川口さんのリズム」であると理解することができた。

 一方、年下の投手相手には反対の行動を取ったという。

 「下の選手に首を振られた時は、一発で変えましたね。要求したところに投げる自信がないのは分かるよ、と。下の選手に偉そうにして、上の人に言われてペコペコしてたんでは、そんなのキャッチャーじゃないですからね。だから、とことんそんな感覚でサインを出してましたね」

 20年の現役生活を送った捕手の投手操縦術は興味深い。

(デイリースポーツ・若林みどり)

 西山秀二(にしやま・しゅうじ)1967年7月7日生まれ。大阪府出身。上宮高から1985年のドラフト4位で南海に入団。87年のシーズン途中で広島にトレード移籍。93年に正捕手となり94、96年にはベストナイン、ゴールデングラブ賞を受賞。広島の捕手として初めて規定打席に到達して打率3割をマーク。2005年に巨人に移籍し、その年に引退。プロ在籍20年で通算1216試合、打率・242、50本塁打、36盗塁。巨人、中日でバッテリーコーチを務めた。

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