【野球】なぜ阪神・藤川監督は優勝監督インタビューで「我々がリーグチャンピオンです」とあえて声を大にしたのか
9月7日、阪神がプロ野球史上最速となるリーグ優勝を飾った。甲子園での優勝監督インタビュー。球団史上初となる新人監督での優勝を成し遂げた藤川監督は第一声で「いやぁ、選手たちが強いわ」と発し、超満員で埋まったスタンドから拍手喝采を浴びた。
優勝決定時点で、2位の巨人に17ゲームもの大差をつけた独走のリーグ制覇。藤川監督は「この143試合っていうのは、ペナントレースという競技でして。ペナントを取る、その1チームだけがチャンピオンですから。我々がリーグチャンピオンです」と、ことさらにリーグチャンピオンの位置付け、価値、重みを訴える声を上げた。
思えば昨年、巨人・阿部監督が今年の藤川監督と同様、新人監督でリーグ優勝を果たした。だが、CSファイナルSで3位からファーストSを勝ち上がったDeNAに3勝4敗で敗れ、日本シリーズ進出を逃した。DeNAはその後、日本シリーズでパ・リーグ覇者のソフトバンクを4勝2敗で下して日本一となり、下克上という言葉が頻繁に用いられた。
リーグ優勝決定後の消化試合を減らすことを目的として、セ・リーグでは2007年からCS制度が導入された。だが、長いペナントレースを制したリーグ優勝チームが最大6試合の短期決戦に敗れ、日本シリーズに駒を進められなかった事例が、セ・リーグでは過去に4例ある。
導入初年度の巨人、14年も巨人、17年は広島、そして昨年が巨人。記憶に新しい昨年は、DeNAの下克上日本一に隠れる形となり、巨人のリーグ優勝が薄らいでしまった感は否めない。
だから藤川監督は声を大にして訴えた。「この後のファイナルステージ、クライマックスシリーズというのは、私たちにとっては別のステージになります。このリーグチャンピオンというのは絶対に消えないので、この誇りを胸にですね、また別のゲームにみんなで戦っていきます」と、CSをペナントレースとは同一線上、延長線上には位置付けず、全く種の異なるゲームだとした。
143試合に及ぶ長丁場を戦い抜いてつかんだリーグ優勝が、CS敗退によって価値が薄まったり、汚されることがあってはならない。チーム力、マネジメント力、個々の力。さまざまな力を合わせて頂点を極めた結晶は何よりも尊い重さを持ってしかるべき。運の要素を多分に含む短期決戦と、同じ土俵で語るべきではないという考えと、仮に敗退した場合に選手たちの頑張りが正当に評価されないことがあってはならないという思いの表れでもあるだろう。
MLBでは、ペナントレースとポストシーズンを全く異なる物として捉える文化が根付いているが、日本はといえば、どちらかというとペナントレースの延長線上と見る向きの方がまだ強いのではないだろうか。藤川監督は決して予防線を張ったわけではないが、指揮官として選手を守るという男気あふれた行動に映った。(デイリースポーツ・鈴木健一)




