【野球】一流企業からの正社員採用、コーチ打診も断り新たな道へ 元阪神ドラ1・的場氏「寝る暇もなく仕事した」過去

 元阪神のドラフト1位で今季から北海道独立リーグ・石狩レッドフェニックスの監督を務めている的場寛一氏(47)。6年間のプロ野球人生を終えて所属したトヨタ自動車野球部では、チームを社会人選手権優勝へ導くなど7年間にわたって活躍した。引退後は人事部に所属し、大企業で社会人の基礎を学んだという。「寝る暇もなく仕事をした」と語るサラリーマン生活、その後の挑戦とは。

  ◇  ◇

 阪神から2005年オフに戦力外通告を受けた的場氏は、2006年からトヨタ自動車野球部に所属し第二の野球人生をスタートさせた。

 翌年にチームは社会人野球日本選手権で初優勝を飾り、08年には連覇も達成。的場氏の活躍は大きく、09年には都市対抗野球で準優勝。10年には社会人野球日本選手権で3度目の優勝を経験、11年にはワールドカップ日本代表にも選出された。

 阪神時代は故障に泣かされ続けたが、社会人野球で見事に花を咲かせた。

 「あれはもう、プロ野球の財産でやって、ただただ野球を楽しんだだけなんです。最後のステージやと思って心の底から楽しんだら、いい結果が出て。厳しい練習に取り組んだりはしましたけど、試合では悔いのないように。選手の仲間とみんなでワイワイして」

 プロ野球時代を上回った7年間の選手生活を穏やかな表情で振り返った。

 安定よりも、常に自分を律する環境を求めたのは興味深い。トヨタには契約社員として入社した。「あえて、そうさせてもらったんです。2年目の時に、正社員でどうだって言われたんですが、お断りして。野球が終わって仕事ができる学力もなく不安で。1年で勝負させてくださいと言ってましたね」

 引退時期も早めに決めていたという。

 「現役はやっても35歳ぐらいまでやなと、引き際じゃないですけど。しがみつけば多分もっとできたとは思いますけど、そうすると一般社会になじめないんじゃないかと」

 コーチ就任の打診もあったというが固辞。引退後はトヨタの人事部に在籍し、女子ソフトボール部のマネジメントや社内イベント事業の運営を担当し、一社員として次の一歩を踏み出した。

 「あえて上司の人も、違う仕事をさせたかったんでしょう。たくさんのことを学びました。エリートが集まるところというイメージがあるんですけど、意外と泥くさい。僕自身も泥くささをもって生きていかないといけないと思いましたね」

 野球一筋で生きてきた的場氏にとって、大企業で社会人としての素養を身につけた時間は貴重なものだった。

 「もう、めっちゃ勉強になりましたね。寝る暇もなく仕事をしてた記憶があります。人よりたくさん時間を費やさないと間に合わない。あとにも先にも一番しんどかった仕事。メールのやり方や、使う言葉も分からなかったですから。“幸いです”とか“幸甚です”とかね」

 今だからこそ明るく笑って話せるのかもしれない。

 人事部でサラリーマンとして2年間を過ごした的場氏は14年に退社し、新たな挑戦に打って出た。スポーツメーカーのアンダーアーマーに転職し、6年間の勤務を経て独立。プロテイン、サプリメントの個人代理店を開始、社長としてエステサロンの経営にも乗り出した。さらにタレント業にも進出して仕事の幅を広げた。そして今回、引き受けたのが独立リーグの監督だった。

 「忙しい方が向いてるんです。何でも手を出してって思うかもしれませんが、話を聞いただけでは分からない、手を出さないと分からないんで。バカだねって言う人もいましたけど、お前らしくていいわってトヨタの人も言ってくれて」

 前向きに突き進んでいく性格は生来のものなのだろうか。

 「どうかなあ」と少し間を置いて「変わったかもしれないです。実行力的には、やっぱり、いろんな社会にもまれましたから、刺激されて変わっていったかもしれない。ジッとしていられないんですかね。毎日、楽しいですよ、おかげさまで」

 そう言い切って清々しい笑みを浮かべた。

(デイリースポーツ・若林みどり)

 ◇的場寛一(まとば・かんいち)1977年6月17日生まれ。兵庫県尼崎市出身。弥富高(現愛知黎明)、九州共立大を経て99年のドラフト1位で阪神入団。通算24試合に出場。2005年に戦力外通告を受け、06年からトヨタ自動車でプレー。3度の日本選手権優勝に貢献。12年の引退後、社業に専念し14年に退社。現在は「くつろぎカンパニー株式会社」代表取締役としてエステやアスリート支援などに取り組み、タレント活動も行う。

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