【野球】キーワードは「衆人環視」 DeNAが春季キャンプの集客に力を入れる理由

 27年ぶりリーグ優勝と日本シリーズ連覇に向け、DeNAは沖縄・宜野湾キャンプで連日汗を流している。1987年に同地にキャンプを張り、今年で39年目。球団は昨年7月に春季キャンプの集客を目的としたプロジェクトチームを初めて立ち上げた。きっかけは現場サイドからの要望だ。営業面を担当する事業部との連携で観客動員は昨年を上回っている。その奮闘ぶりに迫った。

 沖縄本島は例年になく肌寒い天候に見舞われている。しかし、そんな悪条件の中でも、宜野湾キャンプでは昨年以上の観客動員を記録中。背景には昨季の日本一効果はもちろん、新たに結成した「キャンププロジェクト」の存在がある。

 発端は「たくさんのお客さんに来てもらい、緊張感を持って練習の強度を上げていきたい」というチーム側からの要望だった。その一つが選手の心理面でのサポートを担当するメンタルパフォーマンスコーディネーター・遠藤拓哉氏の考えだ。

 同氏は「われわれはファンありき。見てもらうことが恩返しになる。『一生に一度しか見に来られない人もいる』『あなたのために来てる人もいる』と選手たちには言っている。見てくれる人の数は、いればいるだけいい。感謝をパワーに代えることが大切」と話す。選手たちのパフォーマンスをより向上させるためにも、多くの視線が集まる環境を提言した。

 そうした経緯もあり、チームから営業面を担当する事業部サイドに呼びかける形で、昨年7月にプロジェクトが立ち上がった。キャンプの集客に特化した戦略チームは球団初。「総務部コーポレート企画・法務グループ」リーダーの佐々木珠美さんは「キーワードは『衆人環視』。見られる環境をつくってチームを強くしていきます。『価値』を上げて『勝ち』につなげる」と現場と強固に連携した取り組みに力を込めた。

 プロジェクトは他球団のキャンプも視察。敷地内が常に人でにぎわい、スタンドでは練習のプレー一つ一つに拍手が送られる-そんな姿を理想に掲げた。まず取りかかったのは、宜野湾海浜公園内の動線の工夫。メイン球場は最も奥に位置しており、客足を呼び込むために練習時のサインボールの投げ入れなど、さまざまな施策を企画した。公園敷地内には新たにステージが設置され、選手が登場するイベントの開催も予定されている。

 また、地元自治体との協力も欠かせない。「ビジネス統轄本部営業部」の石井大地さんは「野球だけでなく、沖縄体験もカギになります」と話し、地元企業とコラボしたキッチンカーの配置や近隣ビーチでシーサーの絵付け教室を行うなど、周辺のにぎわいとの相乗効果も狙う。発足1年目だが、本拠地・横浜スタジアムで大幅な観客動員増をかなえた実績とノウハウを持つだけに、実現可能なプランが次々に挙がっているという。

 集客の増加は選手も肌で感じている。山本は「見られていると思うと気が抜けないですし、緊張感があります。今年は練習中からたくさんの拍手をいただいたり、多くの方に見ていただけてるのはうれしいですね」と話し、モチベーションの一環となっている。三位一体の取り組みは、悲願のリーグVへの強力サポートとなるだろう。(デイリースポーツ・福岡香奈)

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