【野球】なぜレジェンドを臨時コーチで招聘するのか 松井秀喜、今中慎二、鳥谷敬、松坂大輔…各球団の狙いはどこに

 沖縄、宮崎で春季キャンプが盛り上がりを見せる中、臨時コーチを招聘している球団も目立つ。今年でいえば、中日が今中慎二氏、阪神は赤星憲広氏と鳥谷敬氏、ヤクルトも古田敦也氏と真中満氏を招き、巨人でも松井秀喜氏が10日から、西武は松坂大輔氏が11日から古巣の戦力アップのために一肌脱ぐことになっている。

 果たして臨時コーチを招く狙いはどこにあるのだろうか。前述の名前を見て分かるように、各球団で一時代を築いたレジェンド。数日から数週間にわたって朝から晩まで間近で同じ時間を共有できる。技術指導はもちろん、体験談、調整法、心の鍛え方、時間の使い方などを憧れの存在から直接聞くことができる絶好の機会になっており、各部門、選手個人の底上げが期待できる。

 昨秋キャンプで元中日の荒木雅博氏を招いた日本ハムの新庄監督は「守備がうまいから」と、リーグ最多の94を数えた失策数を減らすための基礎力アップを願った。

 1990年代の中日エースとして沢村賞にも輝いた今中慎二氏について立浪監督は「あれだけ才能のある投手。何かいい引き出しを持ってると思うし、ワンポイントのアドバイスでも変わってくる選手がいると思う」とし、チームに左腕の投手コーチがいないこともあり、同じ大阪出身で1歳年下の後輩が繰り出す“魔法”に期待を寄せた。

 松井秀喜氏の巨人臨時コーチは6年ぶり4度目。現役時代にゴジラと呼ばれた同氏に期待されるのは、坂本、岡本和に続く長距離打者の育成だろう。昨季は打率・244、18本塁打、47打点と苦しんだ丸の復活の後押し、昨季自身初の2桁本塁打となる10本塁打を放った高卒4年目・秋広の一本立ちなど、4年ぶりのV奪回に向けた強力打線の再構築を阿部監督と球団は願っているはずだ。

 阪神では第1クール中に赤星氏が森下などに走塁指導を行い、第2クールから参加した鳥谷氏は昨季リーグワースト2位の20失策を数えた佐藤輝の三塁守備に関し、足の踏み出し方、タイミング、逆シングルのグラブの出し方など、佐藤輝と同じ動きを繰り返す中で丁寧に言葉をかけた。

 臨時コーチが運んでくる副産物として、現在のコーチ陣が保有していない指導法、考え方などがチームに浸透することで成長の一助となる可能性もあるだけに、コーチ陣にとっても貴重な学びの場となることも十分に考えられる。

 大事なのは、臨時コーチの指導法、選手にかけた言葉などを常駐のコーチ陣が把握しておくことだろう。どんな意図、狙いで言葉をかけたのか、どんな言葉を選んでいたのか。引き続きチームに残るコーチが、臨時コーチの当該選手への寄り添い方を理解しておかなければ、本当に苦しんだ時の助けにならない可能性があるからだ。

 家庭の事情、体力的な事情などの理由で臨時コーチしか引き受けられない人もいるだけに、貴重な時間を無駄にすることはもったいない。先人が歩んだ成功への道をなぞり、実りの秋への糧とする。選手にとっても、コーチにとっても有意義な共有空間となる。(デイリースポーツ・鈴木健一)

関連ニュース

編集者のオススメ記事

インサイド最新ニュース

もっとみる

    ランキング

    主要ニュース

    リアルタイムランキング

    写真

    話題の写真ランキング

    注目トピックス