【スポーツ】失意の伊藤美誠 東京五輪・水谷隼の姿が重なる ひな・みう・みま「黄金世代トリオ」で戦うパリ五輪はあるか

 2年間にわたる卓球のパリ五輪代表争いが、全日本選手権をもって終結した。特に注目を集めた女子シングルスの残り1枠を巡る争いは、平野美宇(木下グループ)に軍配が上がる形で決着。失意の落選となった伊藤美誠(スターツ)は「シングルスの優勝を目標にしていた。団体戦に選出されても出るか、はっきり決まっていない」と辞退の可能性も示唆したが、日本協会はあくまで「五輪で一番勝てる選手」を選出する方針。2月5日に発表される見通しで、2000年生まれの「黄金世代トリオ」で戦う最初で最後の五輪となる可能性も残る。

  ◇  ◇

 代表2枠が確定し、3枠目となる団体戦代表のゆくえに注目が集まる。シングルスに加え、ダブルスの相性も踏まえて強化本部推薦で選ばれる。選考レースで次点の3番手となった伊藤が最有力だが、4番手ながら直近の大会で結果を出している15歳の張本美も有力。女子代表の渡辺武弘監督は「会議を重ねて決める。まだなんとも言えない。悩ましい」と話すにとどめたが、伊藤の意思確認はしないといい「五輪で一番勝てる選手に出てもらう」と強調した。

 2年間の選考レースを思い返すと、国内選考会を中心とした選考基準に変わり、伊藤はずっと適応しきれずにもがいていたように映る。若手に敗れる光景も珍しくなくなり、腰部や肋骨(ろっこつ)の痛みなどコンディション不良にも悩まされた。

 どこか重なるのが4年前の水谷隼の姿だ。16年リオ五輪で日本男子初となるメダリストに輝いた第一人者だが、東京五輪の代表争いでは僅差で3番手に沈み、シングルス切符を逃した。目の不調や腰の痛みに悩まされ、本来のプレーができないもどかしさを抱えていたが、最終戦を終えた直後「今までのような闘争心が出ない。身を引くタイミングかな」と消極的な発言を口にした。

 それでも日本男子の倉嶋洋介監督(当時)は3枠目の代表に水谷を起用した。団体戦ではダブルスで不利とされる左同士のペアとなる懸念はあったものの、新種目の混合ダブルスでは伊藤とのペアで金メダルも見込まれ、何よりカリスマの経験と実績は不可欠だった。選考レースから時間がたち、21年夏の本番ではモチベーションや自信も回復。混合ダブルスで頂点に輝き、団体戦でも丹羽との左同士ペアで力を発揮したが、何より若きエース張本智を支えながらメダルに導いたことは記憶に新しい。

 伊藤も落選直後とあって失意に暮れているが、東京五輪の3種目全てでメダルを獲得した底力は誰もが知るところだ。今でも世界ランクは日本勢2番手の10位で、ダブルスで早田とのペアは世界屈指。エース早田をシングルスで2回起用するのが基本線となれば、17年全日本選手権以来7年ぶりの「みうみま」復活の可能性もある。

 ここ10年の日本卓球界は「黄金世代」が中心となって彩ってきた。当時中学生だった「みうみま」がワールドツアー最年少制覇を果たしたのが2014年。リオ五輪に高校1年の伊藤が出場し、全日本選手権でも17年以降の8年間で7大会は平野、伊藤、早田が優勝を飾ってきた。打倒中国の夢を現実的な目標に変えたのもこの世代。16年世界ジュニア選手権の団体戦では伊藤、平野、早田の3人で中国の6連覇を止め、金メダルを獲得している。

 いずれにせよ、金メダルに近づく3人目を選ぶのが大前提。成長著しい15歳の夢舞台での覚醒も見てみたいし、最初で最後かもしれない五輪でのそろいぶみで「黄金世代トリオ」の集大成を見てみたいという思いもある。(デイリースポーツ・藤川資野)

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