【野球】高校球児悩ます3ミリの差 センバツから新基準バット導入 「飛ばない」だけではない「変化」とは

 新基準バット(上)と従来バット(下)=ミズノ社提供
 明治神宮大会で新基準バットを使う北海の選手=23年11月
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 今回の「スポットライトの裏側」は、今年の第96回選抜高校野球大会(3月18日~13日間・甲子園球場)から導入される新基準バットへの適応に、各校が抱える課題に迫る。意外にも低反発になったこと以上に、バットが細くなったことに球児は苦戦。打力低下が必至となる中、現場はあらゆる試行錯誤をこらしていた。

 飛ばないバットに各校関係者は頭を抱えていた。従来のものより球を捉える打球部の肉厚が厚くなり、低反発仕様になった新基準バット。球児の1安打、1本塁打の価値がグッと上がりそうだ。

 2度の春夏連覇を成し遂げ、今春センバツ出場が濃厚な強豪・大阪桐蔭でさえも苦戦を強いられている。昨秋の神宮大会終了後からチームで導入して練習試合、紅白戦で使用。西谷浩一監督は「ヒットの本数も減っているし、バッターにとっては難しい」と率直な感想を口にした。

 多くの実戦を重ねた中、試合時間の短縮も肌で実感。「甲子園なら2時間以内は余裕でいくんじゃないですかね。両方打てなかったら、1時間30、40分になる可能性がある」。平均2時間と言われている高校野球の試合時間。名将がそれを優に切ることを想定するほど、打力低下は必至となっている。

 意外にも、飛ばない以前にボールを捉える難易度が上がったことに苦労の声が多かった。従来は最大径67ミリだったのに対し、新基準バットは64ミリ。その3ミリの差が球児にとって大きな壁となっているようだ。

 「捉えにくい。後ろにファウルになることが多くなった」と話すのは昨秋近畿大会で4強入りした耐久の主将・赤山侑斗内野手(2年)。井原正善監督(39)も「(細くなったことが)一番ネックです。物理的に捉える事が難しくなる」と説明した。同校は重さ1キロを超える細い鉄の棒にグリップを巻いて、バドミントンのシャトルを打つ“羽打ち”を実施。振る力、ミート力の向上を一石二鳥で得られる練習法で適応に励んでいた。

 飛距離低下により、守備シフトにも変化の兆候がある。打球が外野手の頭を越えるリスクが下がったことから、外野守備の定位置は前進。それに伴い、右翼手、中堅手がライトゴロ、センターゴロを狙う練習を行う高校も多い。よりヒットゾーンが狭まることも、投高打低の追い風となりそうだ。

 昨秋の神宮大会では北海が全国大会で初めて新基準バットを先行使用し、作新学院相手に延長10回タイブレークの末に初戦敗退。わずか3安打で適時打は出なかった。

 日本高野連が導入した意図通り、投手のリスク軽減の効果は抜群のようだ。飛ばないバットによる打の劣勢をどうはね返すのか。まずはセンバツ出場校の戦いっぷりに注目が集まる。(デイリースポーツ・北村孝紀)

 ◆新基準バット導入の経緯

 2019年に投手の安全対策として金属バットの反発性能の見直しに着手。

 22年2月に新基準を制定し、現行の金属バットと併用可能な移行期間を設定。

 スポーツ用品大手のミズノが同11月末に新基準に対応したバットを発売。

 23年11月から日本高野連加盟校に配布。

 24年センバツから導入を開始。

 ◆導入理由

 日本高野連は打球による投手の受傷事故防止などの観点から、新基準バットの導入を決めた。現在の高校野球は打高投低となっており、球数増加による投手の肩、肘の負担軽減も目的とされる。新基準バットは従来と比べて最大直径67ミリから64ミリと3ミリ細く、一方で打球部の金属は3ミリから4ミリ厚くし、反発性能を抑えたものとなっている。

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