【野球】記録に残るミスと記録に残らないミス なぜ阪神は地の利を生かせず負けたのか
「SMBC日本シリーズ2023、阪神タイガース4-5オリックス・バファローズ」(31日、甲子園球場)
圧倒的なホーム感が漂う甲子園で、岡田阪神が普段着野球を遂行できなかった。4点差を1点差とし、あと一歩のところまで追い上げたが、普通のことを普通にやるスタイルで勝利を積み上げてきたチームだけに、普通にやれなかったことが敗北に直結した。
前兆は1点リードの三回無死一塁。中野がカウント1-1という若いカウントから珍しく仕掛けたが、右前打で出塁した近本を二塁に進められない左邪飛に倒れた。最悪でも1死二塁という計算が狂い、近本が森下の初球に盗塁死。流れを手放した。
直後の四回、伊藤将が頓宮に同点ソロを被弾。そして五回だ。無死一塁から、若月に連続ボール。木浪がマウンドに歩み寄って間を取ったが、それでも伊藤将は落ち着かず一塁にけん制を入れた。3球目、オリックスにエンドランを仕掛けられ、打球は二遊間を抜けた。
阪神が得意とする形をオリックスに決められ、甲子園に重苦しい空気が漂った。無死一、三塁。岡田監督は当然のように前進守備ではなく、通常シフトを敷いた。広岡の遊ゴロ併殺崩れで1点を勝ち越されたが、ここまでは想定内。だが、続く東への初球、一塁・大山、三塁・佐藤輝が本塁へチャージをかけたが、制球自慢の伊藤将がまさかのボール。併殺の計算が狂った2球目の送りバントを伊藤将が二塁へ悪送球。アウトを稼げずにピンチは広がり、ここまで10打数無安打と逆シリーズ男の雰囲気が漂い始めていた宗に痛恨の2点適時二塁打を浴びた。
岡田監督は「そうやなあ、バントひとつアウトにしといたらええのにのう。ゲッツー取れると思ったんやろうなあ。握れてなかったよ。こっちで見とったらな。最後ポーンって跳ねたからな。バントが」と渋い表情で振り返り、伊藤将も「握り損ねたって感じですね。あそこのミスが一番の原因」と自らを強く責めた。
今季10勝5敗、甲子園通算でも15勝5敗と無類の強さを誇っていた左腕が本拠地で我を失っていたように見えた。1勝1敗で迎えた第3戦ではあるが、2戦目を大敗で落としていただけに、絶対に勝たなければという思いもあっただろう。
我が庭でいつも通りのプレーができないシーンは八回にもあった。1死からノイジーが中前打。ここで代走・島田が送り込まれた。1球目に盗塁と思われるようなスタートを切るそぶりを見せた。続く2球目。盗塁を試みたと思われるスタートを切ったが、直後につまずき、二塁を陥れることができなかった。
島田はCSでの出場がなく、日本シリーズも初出場。ここで岡田監督は作戦を犠打に切り替え、坂本がきっちり送って2死二塁の同点機を整えたが、木浪が空振り三振に倒れて無得点に終わった。
勝負事にタラ・レバは禁物だが、あの場面で島田が盗塁を決められていたら…。七回に3点を返して1点差に迫っていた。中盤から静まりかえることの多かったスタンドは、いつもの雰囲気を取り戻していた。1死二塁で押せ押せムードとなり、フォークボールを得意とする宇田川にさらにプレッシャーをかけられていたはずだが、逆に島田が重圧に押しつぶされてしまう形となり、地の利も、自慢の足も生かすことができなかった。
九回も守護神・平野佳を攻め、2死一、二塁と一打同点、一発逆転サヨナラの舞台を整えた。惜しくもフルカウントからのフォークに大山のバットが空を切ったが、スタンドには八回終了後に漂った失望感ではなく、明日につながる負けという空気感が勝っていた。
岡田監督は「いやいや、もう全然切り替えられるよ。最後こないして追い上げとけばなあ、だいぶそら展開も違うし。まあひとつ追い越されたけど、また明日あるし」と強がりではなく、前を向いた。
1勝2敗。第9戦が発生しない限り、甲子園での岡田監督の胴上げは難しくなった。注目の第4戦。勝てばタイ、負ければ王手をかけられる。38年ぶりの日本一に向け、大きなカギを握る一戦となる。(デイリースポーツ・鈴木健一)





