【野球】なぜ阪神・青柳は2軍降格になったのか 2年連続最多勝右腕がハマった落とし穴 評論家が分析
復調の兆しをつかみ取ることはできなかった。19日の広島戦。阪神・青柳晃洋投手は初回、左打者ばかりを並べた広島打線につかまり、5安打3四球でいきなり5点を失った。立ち直りの気配を見せていた五回、2死からの死球、二塁打で二、三塁のピンチを迎えると、ベンチは韮沢を申告敬遠。投手・玉村との勝負を選択したが、2点右前適時打。5回8安打5四死球で今季ワーストの7失点。翌20日に出場選手登録を抹消され、2軍降格となった。
19日の試合後、岡田監督は青柳について「おんなじやんか、あんなんもう。毎回毎回おんなじこと。五回もツーアウトのデッドボールからやろ。ピッチャーに打たれんかったら、勝ち投手やで。ならんで良かった、勝ち投手に。もうええわ、青柳の話は」と、打線が直後に5点を奪って一時同点に追いついたことを踏まえつつ、厳しい言葉を並べた。
今季は7試合に先発して2勝3敗、防御率5・63。チームは今季最多の貯金11で首位を快走しているが、2年連続で最多勝に輝き、昨年は最多勝、最優秀防御率、最高勝率の投手3冠を獲得した右腕が乗り切れないでいる。
データも青柳の変調を裏付ける。昨季の与四死球率が2・2個だったのに対し、今季は2倍以上の同4・7個。制球難を課題としていた昔の青柳に戻ってしまっている。右打者は被打率・217と抑えているが、左打者は同・302と過去4年間の中で最も悪い数字だ。他球団は当然この傾向を把握しており、開幕戦で宮崎をスタメンから外したDeNAや19日の広島など、青柳対策に左打者をズラリと並べる要因になっている。
また、球種別の被打率にも変化が見て取れる。今季の直球の被打率は昨年の・259を上回る・208なのだが、昨季・248だったツーシームの被打率が・321、昨季・160だったチェンジアップが今季は・391と仕留められるケースが増えているのだ。(データはJapan Baseball Data)
阪神OBの中田良弘氏は「今年は球の切れが悪い。これまでは多少甘いところにボールが行っても、力で抑え込めていたんだけどね」と指摘し、不振の原因については「投げ終わった後の体が三塁側に倒れるケースが多い。青柳のいい時ってのは、体の中心に軸があって、ピシッと真っすぐに立てているんだよね」と、投球フォームのバラつきが制球難につながっているとの見方を示した。
続けて「本人も苦手と自覚している左打者の内角に、今年は思った軌道の真っすぐが投げられてないんだよね。だから、外角のツーシームやチェンジアップに対して踏み込まれて、被打率が上がる結果になっている」と解説した。
さらに「青柳は直前に投げたボールがいくら悪かったとしても、それを引きずらないといういい面を持ってるんだけど、今年に限ってはストライクと言ってもらえなかったボールを引きずっているように見える」と結果が出ないことが、精神的にもマイナスに作用してしまっているように感じるとも指摘した。
青柳が復活するために必要なものとは-。中田氏は「まずはリフレッシュ。走り込んで体の切れを出すこと。あとは遠投を多めにやるといい」とした。ブルペン入りの回数や実戦登板を増やすのではなく、遠投を取り入れる狙いとしては「18・44メートルの距離っていうのは、言葉は悪いけど、ある程度の手先のごまかしが利いてしまう。だけど、遠投は体全部を使わないと投げられない。今はフォーム的にも、精神的にも小さくなってしまっているので、体を大きく使う遠投を多めに繰り返すことが、自分を取り戻す近道だと思う」と助言した。
自らは不調でも、チームは25勝14敗1分けの貯金11で、2位・DeNAに2ゲーム差をつけて首位を快走していることを青柳は救いとしていい。残り103試合。シーズンは長い。1軍復帰を急ぎ、焦る必要はない。半信半疑、中途半端な状態で再昇格することだけは避けなければならない。今は自分を見つめ直し、さらにステップアップするため大事な時間なのだ。(デイリースポーツ・鈴木健一)





