【野球】新井監督が爆笑した岡田監督の「ささやき」とは?

阪神・岡田彰布監督とのメンバー表交換で笑顔の広島・新井貴浩監督(右)=甲子園
試合前、広島・新井貴浩監督(手前)とメンバー表交換をする阪神・岡田彰布監督
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 初めてあんなシーンを見た。今週火曜日からの阪神対広島3連戦(甲子園)、その初戦での一コマだ。

 阪神・岡田彰布監督と広島・新井貴浩監督が試合前のメンバー表交換で何やら話し込んでいる。スタンドからの歓声もあってグラウンド上は声が通りにくいのは想像できるのだが、新井監督は身を乗り出して岡田監督の言葉に聞き入っていた。

 それでも聞こえにくかったようで、カープの指揮官は「え?もう一度お願いできますか?」といった風情でさらに前のめりに…。審判にも何か確認している仕草が記者席からも見て取れた。

 一瞬の間(ま)があったその直後、新井監督は何とも言えない表情で爆笑。岡田監督はニヤリとしてベンチへ下がった。

 メンバー表交換といえば、審判団と両監督がホームベース付近に集まり、それほど言葉を交わすことなく、挨拶といっても帽子を取るくらい…いや、時には目も合わすことなくベンチへ引き返す監督を見ることさえある。

 それなのに、あの長いやりとり…。かつて阪神で「監督&選手」として戦った間柄。その後も関係は良好…とはいえ、あの場で時間をかけて何を話していたのか。また、なぜ新井監督はあんなに笑っていたのか。取材してみると…。

 新井監督「岡田監督の言葉がはっきり聞き取れなかったので、聞き返したんですけど、分からなくて…。審判の方にも聞きましたから(笑)」

 前かがみになって顔を近づけていたのはそういうわけだったそうだが、一体何を?

 「お、優勝監督」

 岡田監督は新井監督にそんな言葉をささやいたそうだ。

 優勝監督?

 岡田監督独特の言い回しだが、つまり、首位を走っているチームの監督-という意味合いで、そんなふうに声を掛けたという。

 今年の阪神のチームスローガンがそうであるように、岡田監督は願掛けのように、一切「優勝」とは口にしない。目指すべく自軍のそれには「アレ」としか言わないのだが敵将に向けては…これも、ならではの願掛けだったりして?

 確かに、この3連戦を前に新井カープは首位に立っていた。岡田阪神は横浜で連敗し、首位を譲った格好。かわいい後輩監督に向けた岡田流のイキな「挑発」だったのかもしれない。

 今季の阪神対広島は何かと話題を振りまくカードになりそうだ。20日の第3戦は両軍ブルペン陣が奮闘する戦いになった。3戦目は、カープ3点リードで迎えた最終回に新井監督は栗林をマウンドに。しかし、阪神が粘りで1点を返し、なお無死、一、二塁。この戦況で新井監督は就任後初めてマウンドへ足を運び、栗林の背中を押した。 

 「お前で打たれたら本望!思い切り腕を振ってこい」

 試合後、カープのベンチ裏へ足を運んで取材してみると、その対話が明らかになった。

 マウンド上での言葉を報道陣に聞かれた栗林は「あ…それは新井監督に聞いてくれませんか」。

 その後、姿を見せた新井監督は同じ質問に「それは栗林に聞いてくださいよ。え?栗林が僕に聞いてくれって?(笑)」

 苦笑交じりに、それでも嬉しそうに、信頼するクローザーとのやりとりを明かした。

 マウンドでゲキ-といえば岡田監督にも象徴的なシーンがある。

 阪神が前回リーグ優勝した05年の回想である。阪神は9月7日・中日戦(ナゴヤドーム=当時)の九回に同点に追いつかれ、なお1死一、三塁。サヨナラの窮地で岡田監督は就任後、初めてマウンドへ向かい、久保田に「オレが責任取る」などと、ゲキを飛ばした。これを受けた久保田は後続を連続三振にきってとり、延長十一回に中村豊の決勝ホームランが飛び出した。「監督の差で負けた」と、落合監督も脱帽した同シーズンの分岐点ともいえるゲーム。この岡田-久保田のやり取りは「実はこんな言葉だった」のように諸説語りぐさになっているが、阪神ファンにとっても印象的なシーンといえる。

 阪神、カープともに今季16試合目。新井監督は、シーズン序盤であれ「ここは俺が」と信念をこめて動いた結果、連敗で迎えたカード3戦目で一矢報いたわけだ。

 岡田監督のささやきから始まった今カード。これで対戦成績は阪神の3勝2敗になった。次回対戦は5月5日からのGW3連戦(マツダスタジアム)。初戦のメンバー表交換から注目したい。(デイリースポーツ・吉田 風)

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