【野球】耐えて勝つ!阪神、ヤクルト、巨人の三つ巴ペナントレースに思う名将・古葉竹識の言葉

 座右の銘である「耐えて勝つ」のサイン色紙を手にする古葉竹識さん
3枚

 耐えて勝つ!阪神、ヤクルト、巨人の三つどもえのペナントレースに思う、名将・古葉竹識(85)の言葉-。

 セ・リーグのペナントレースも残り30試合前後となったが、プロ2年目の奥川恭伸(20)が安定した成績を残すようになり、4番・村上宗隆(21)が史上最年少の通算100号本塁打を記録したヤクルトの勢いに注目している。だが、勝負はゲタを履くまで分からない。上位3チームのチーム状況を考えると、最後の最後までもつれるだろう。

 今後は1試合に占めるウエートが今まで以上に大きくなるが、残りの試合数を考えれば、どのチームも現状の戦力が大幅にアップすることは考えづらい。

 そこで抜け出すポイントのひとつになるのが指揮官の采配だろう。3チームで指揮官として優勝経験があるのは巨人・原辰徳監督だけ。阪神・矢野燿大監督、ヤクルト・高津臣吾監督は選手としては優勝に貢献しているが、監督として優勝争いをするのは初めて。

 今後は監督として未体験ゾーンに突入し、プレッシャーから采配ミスを犯す可能性もでてくる。信念を持った、ブレない采配こそが明暗を分けるかもしれない。

 赤ヘル軍団を球団史上初のリーグ優勝、日本一に導いた古葉竹識監督は、まさに「耐えて勝つ」を座右の銘にした、ブレない信念の人だった。

 私はこれまでプロ野球チーム7球団を担当してきたが、最初に担当した広島の監督が古葉監督だった。古葉監督は1985年のシーズンを最後に広島の監督を勇退したが、まさに耐えに耐えた年だった。

 日本一に輝いた前年と比べ故障者が続出。主砲のミスター赤ヘル・山本浩二が故障で出遅れ、復帰したのは5月5日の大洋(現DeNA)戦からだった。また、前年16勝した山根和夫が右肩痛でシーズンを棒に振るなど投手陣に故障者が続出した。それでも、なんとか阪神に次ぐ2位を確保できたのは、川端順、高木宣宏、金石昭人ら、当時の若手投手を耐えながら使い続けた結果だった。

 古葉監督はチームの敗戦にも「それを言ったら愚痴になる」と、試合後声ひとつ荒らげることはなかった。また、試合後の会見を拒否したり、途中で打ち切ったりしたこともなかった指揮官だった。

 だが、実は激情型の側面を持っている人だった。こんな出来事があった。ある日、古葉監督が右手だったか左手だったか定かではないが、包帯でグルグル巻きにして球場に現れたことがあった。「どうしたんですか?」と質問すると「壁が手にぶっかってきた」と笑顔で返答してくれた。

 後で関係者に取材してみると、前日の試合で敗戦した瞬間、手で壁を殴ったという。だが、そんなときでも、感情に押しつぶされることなく、采配は沈着冷静だったと思う。

 阪神、ヤクルト、巨人の3監督も予想外の結果に感情をあらわにしたくなるときもあるだろう。だが、それを押し殺し「耐えて勝つ」-。その先に開けてくるものがあるはずだ。=敬称略=(デイリースポーツ・今野良彦)

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