【野球】ブレーク中の広島・林晃汰 智弁和歌山時代の「悔しかった」経験が今に生きる

 高卒3年目の広島・林晃汰内野手(20)がブレークの兆しを見せている。19日・DeNA戦(東京ドーム)では3号ソロを含む初の4安打4打点。交流戦では12球団トップの得点圏打率・667を記録して、クリーンアップを任されるなど今後は一層の飛躍が期待されている。

 高校時代は名門・智弁和歌山で1年春から公式戦に出場し、高校通算49本塁打を記録した。当時、関西の高校野球担当の記者は、同級生の大阪桐蔭・根尾(現中日)、藤原(現ロッテ)、報徳学園・小園(現広島)とともに、常に動向をチェックする存在だった。

 全国区の選手だった林だが、高校時代に苦しい時期を過ごしている。

 高校2年だった2017年夏。和歌山大会1回戦で右肘に違和感を覚えた。ただ、3年生への思いや、自身初の甲子園が掛かっており、痛み止めの注射を打ちながらプレーを続行。その結果、甲子園出場を果たした。

 1回戦・興南戦では当時1年で、現在はオリックスでローテの一角を担う宮城から中堅左へ豪快な一発を放ち、スカウトの評価を上げた。

 一方で右肘は限界が来ていた。1回戦を突破した翌朝。右腕が曲がらなくなっていた。「病院で診てもらって、手術をせざるを得ない状況だった」。疲労骨折だった。

 2回戦の同年センバツ王者・大阪桐蔭戦は先発を外れ、代打で安打を放つもチームは1-2で惜敗。大会後に手術を受け、ボルトを2本入れた。

 リハビリに取り組んだ2年秋。貴重な時間を過ごした。秋季和歌山大会はスタンドから応援するのではなく、ボールボーイを務めた。「一回、外からチームを見てみろ」。高嶋監督の指示だった。

 さらにチームは主砲だった自身を欠きながら、秋季近畿大会決勝まで勝ち進み、18年センバツ出場を決めた。1年春から公式戦に出続けていた林にとって、サポート役に徹することは新鮮な経験だった。

 「素直に悔しかったけど意識が変わった。今までそういう経験がなかったので」。野球の楽しさ。プレーできるありがたさ。支えてくれる人の存在。自分を見つめ直す時間になったという。

 18年春から実戦復帰すると、吹っ切れたように快音を響かせた。同年春から夏の甲子園で敗退するまでに20本塁打を積み上げた。

 今、1軍で活躍する林のプレーを見ていると、必死な姿が印象に残る。プロでは当たり前のことだとはいえ、高校時代の苦しい経験が今も生きているように感じる。

 高校時代は口数が多いタイプではなく、照れ屋だった印象がある。上位指名が有力なドラフト候補なのに、こっそりと「僕、プロに行けますかね?」と心配そうに聞いてくることもあった。今ではヒーローインタビューでも堂々とした受け答えを見せており、プレー以外の成長も感じる。

 右足を上げて力強く振り切るスイングは高校時代から健在。広島の次世代を担う大砲の成長曲線が楽しみだ。(デイリースポーツ・西岡誠)

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