【野球】甲子園最多勝の高嶋仁氏が野球少年に語りかける“勝敗より大事なもの”
かつて甲子園を沸かせた闘将は笑顔で「みなさん、野球は楽しいですか?」と子供たちに問いかけた。監督時代に歴代最多の甲子園春夏68勝、通算3度の優勝を成し遂げた智弁和歌山の高嶋仁名誉監督(74)が14日、奈良県の葛城JFKグラウンドで、中学野球を目指す小学5、6年生らを対象に講演を行った。
2018年の監督勇退後、野球人口減少を食い止めるため各地で少年野球の臨時指導や講演を続けている。この日も集まった子供らに「野球を好きになってください。楽しまないとあかんよ」と言って聞かせた。指導者や保護者にも「上に立つ人がどんな言葉をかけるかが大事。言葉で選手を傷つけないこと。人が人を動かすのは言葉です」と呼びかけた。
昭和、平成を経て令和の野球。指導のやり方も時代によって変化している。自身の経験を踏まえ「僕は甲子園で、タイムリーエラーをした選手にベンチでこう言いました。『お前のエラーで何点取られたんや?』。『2点です』と選手が言うと、『2点か。2ランを打ったら帳消しやな』と返した。するとその選手は本当に2ランを打ったんです」。静かに聞いていた少年から「え~!」と歓声が上がった。
最多勝監督の話に興味津々で耳を傾ける子供たちへ「勝敗は高校へ上がってからでいい。それまでは楽しく。そしてケガをしないようにトレーニングを積んでください。野球は思いやりのスポーツ、準備のスポーツ。練習の中に、世の中に出てから役立つことがいっぱい入ってる。がんばってください」と願いを込めた。
コーチ学教授を務める環太平洋大の授業や講演会をこなしながらも、少年野球の普及に力を入れる。その本心は「少年たちに、野球をやめないでほしい」という願いだ。
野球人口減少が懸念される中、日本高野連は「高校野球200年構想」と称し、次の100年へ向けた子供たちへの野球普及活動を行う。日本野球機構(NPB)もジュニアチームに力を入れる。球界全体の課題に高嶋氏は「野球を始めてから、そのままやめずに続ければそれほど野球人口は減らないと思う」と見解をみせる。野球がつらくなったり、大きなケガをしたりして途中でやめる選手を作らないこと。高校生、大学生になるまで野球を好きでいてほしい。「それにはやはり、指導者の意識改革。優しく丁寧に教えることです。勝つことも大事だが、少年野球の時期はもっと大事なものがある」と力を入れた。
「子供たちの目がギラギラしているのが印象的でしたね」。この輝きを大人になるまで野球に向けてもらいたい。その思いで、75歳を迎える今年も野球の楽しさを伝え続ける。(デイリースポーツ・中野裕美子)



