【芸能】無観客はピンチ?チャンス? 若手落語家は“すべらない噺”武器に生配信

 新型コロナウイルスの影響で、テレビ番組が無観客放送になったり、お笑いや音楽業界がネット配信を試みたりなど、芸能界は苦心している。8日に決勝を迎えた「R-1ぐらんぷり2020」も無観客。客の反応がない中でのネタ披露は難しさが問われる一方、芸人の個性や芸風によっては“ピンチをチャンスに”変えられる可能性もあるかもしれない。

 演芸は客の笑い声と一体になって初めて成立する部分がある。4日に300作目の創作落語「ハッピー・エンジェル」を、無観客の大阪・なんばグランド花月で収録しYouTubeで配信した落語家・桂文枝(76)は「笑いはお客さまに育てていただく、お客さまあってのものなので、無観客で落語を披露することの難しさを感じました」とコメント。広々とした客席が無人という、異例の収録だったことを想像させる。

 R-1決勝も今回はスタッフの笑い声だけ。芸人も審査員も、一般客の反応がないことに戸惑っただろう。タレント・明石家さんま(64)はR-1について「優勝者変わるぞ。客入ってる笑いと(入ってない笑いで)」とテレビ番組内で分析した。ダウンタウン・松本人志(56)は「無観客のR-1グランプリ。お客さんの笑い声がないと審査員もたいへんだ。センスが問われるからね」とツイッターに投稿した。

 一方で、若手も劇場を使えない中で試行錯誤している。上方の若手落語家が8日、大阪・天満天神繁昌亭から落語のYouTube生配信「第10回テレワーク落語会」を行った。新型コロナウイルスの影響で仕事が激減した桂紋四郎(32)を中心に、2月末からYouTubeで落語を配信してきた。徐々に人気が集まり、今回は繁昌亭会議室からの生配信が実現。笑福亭鉄瓶(42)と桂雀太(43)が1席ずつ披露したほか、繁昌亭の施設紹介も行った。

 落語生配信は機材に向かって話すため客の反応はない。しかし参加者の森乃石松(38)は「無観客なので歓声がない反面、すべることもない」とメリットも感じている。紋四郎も「最初はけいこをネットに流す感じかなあと思いながら始めたが、実際はちょっと違う。YouTubeは画面にコメントが流れるので、けいことは違って気合も入る。実際、落語がうまくなっている気がする」とプラスに捉えていた。笑福亭笑利(36)は「ウケないがすべらないので、テンポを崩さずできる」という点も挙げた。

 ゲスト出演した上方落語協会・笑福亭仁智会長(67)は「けいこは普通、壁か鏡を向いて話すが、YouTubeはその先にお客さんがいるので次につながる」と歓迎。「今後の情勢変化によって劇場の再開時期が変われば、ネット配信も現実的になるかも」と、若手の動きからヒントを得た様子だ。

 R-1審査員の友近は「芸人さんのタイプによっては、お客さんがいないほうが自分が本当にやりたいことがぶつけられる。そういう人にとっては向いてるかな」と話していた。無観客での笑いにはさまざまな受け取り方があるだろう。新たなエンターテインメントのきっかけにできるか、芸人たちの試行錯誤は続く。(デイリースポーツ・中野裕美子)

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