【スポーツ】渋野日向子は真のスターだ。取材現場でも神対応連発!

 女子ゴルフの渋野日向子(20)=RSK山陽放送=は日本人42年ぶりにメジャー大会を制した選手だが、トーナメントを取材する現場記者としては、42年ぶりとは言わないまでも、久々に登場したファンや報道陣を含めた大会関係者に“神対応”ができる選手だと感じている。

 まず、全英女子オープン制覇からまだ2カ月しかたっていないというのに、英国へ出発前と帰国後の天地がひっくり返るような環境の差を、戸惑いながらも徐々に受け入れ、しっかりと自分の立ち位置をつかんでいるのが素晴らしい。

 メジャーチャンピオンともなれば、周囲の扱いはVIP級に変わる。それは居心地がいいとは違う。気を遣われるのと同じくらい気を遣わなくてはならなくなるし、常に好成績を期待される責任と重圧ものしかかる。おまけにわずかなプライベートタイム以外は、毎日の生活、振る舞いを全国から注目されるわけだから、弱冠20歳の女性なら普通は逃げ出したくなってもおかしくない。

 にもかかわらず渋野はトレードマークの笑顔を忘れずに、嫌がる様子もなく対応している。私たちが渋野と接することができるのは、トーナメント取材の現場に限られるが、そこで見せる渋野の振る舞いや周囲への気遣いは、20歳とは思えないくらいにナチュラルで適切で見ているこちらも気分がよくなるほど。30年以上著名なスポーツ選手を取材してきた記者としても、これほどまでに取材する側の好感度が高い選手を見るのは初めてだ。

 振り返ってみれば、渋野は全英女子オープンで優勝した後、羽田空港内で凱旋帰国記者会見を開いて以来、出場する試合は初日前日から最終日まで成績にかかわらず会見に出席している。それがかなりの負担になっていることは、近くで見ていれば、本人でなくても分かる。それでも渋野は弱音のひとつも吐かず、いつもどんな時でも、あの笑顔を見せながら真剣に質問に答えてくれる。しかもこんな答えでいいのかなと自問自答している感じもあり、こちらが申し訳ない気持ちになるくらいだ。

 ギャラリーへの神対応も驚がくに値するものがある。先日のミヤギテレビ杯ダンロップ女子オープン最終日は同期の大里桃子、臼井麗香とのラウンド。心ないギャラリーがショットを打つ寸前に携帯カメラのシャッターを押した(これは禁止行為なのでやめてください)が、ホールアウト後に「あのタイミングでやるか、とは思いましたが、先に言ってくれたら3人でピースしたのにって爆笑していました」と話した。こう言われたら失礼をしたギャラリーだって救われる。もう二度としないと思ってくれるかもしれない。記者としては過去にこんなことを言う選手はいなかったので、びっくりするやら感心するやらだった。

 もともと客観的に自分を見る目を持ち、素直で謙虚な性格、人を思いやる優しい心を持っていたのだろう。全英で勝ったって、自分自身は変わらない。だからこそ周囲にも変わってほしくはないが、突出したヒロインが出た場合、周囲の対応は変わるもの。それならば、そういう環境でも相手の立場を尊重して応じていこう。自分はそれをやった後で、しっかり練習してゴルフをうまくなればいい。そんなふうに思っているように見えるのも、渋野のすごいところだと思う。

 渋野には新しいスターのオーラがあるように感じる。それが何なのか、今は正直答えが見つからないが、何か人としての本家本流正統派な感じがしてならない。こういう選手を見られたことは、スポーツ記者冥利に尽きるので、今後も取材現場の端っこで見ていられたらと思う。(デイリースポーツ・松本一之)

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