【野球】荒木、清宮ら東京の球児を育んだ神宮第二球場 高校野球は秋季大会で幕

 長年の間、東京の高校野球の舞台を担ってきた球場が今秋で役目を終える。学生野球の聖地・神宮球場のすぐ隣に位置する神宮第二球場。2020年の東京五輪・パラリンピック大会後に解体が予定されている。高校野球の会場として使用されるのは、10月12日開幕の秋季東京大会本大会が最後。手書きのスコアボードなど昭和の香りが残る名スタジアムは数々の歴史で彩られてきた。

 球児、指導者、そしてファンにとっても思い入れの深い球場ができたのは、1961年のことだ。加盟校が増え続けていた高校野球に加え、東京六大学野球、東都大学野球など大学野球の試合に対応するには神宮球場だけでは消化しきれないという声が上がった。

 3年後の東京五輪を見据えて仮設体育館建設の意見もあったが、東京都からの了承を得て同年11月に着工が始まった。場所は相撲場跡地で、突貫工事により約3カ月後に完成。62年4月には球場開きが行われた。

 ホームベースの位置を変更するなどの改修を経て、現在は両翼91・4メートル、中堅116メートルの広さに落ち着いた。2階席もあり、収容人数は約5600人。93年には土から透水性人工芝に変わり、安定した試合運営が可能になった。この芝は“兄”である神宮球場の“お下がり”だ。

 ただ、変わらなかったものもある。それはバックスクリーンのスコアボード。いまでは珍しい手書きのものを現在も採用している。球場職員がチーム名や得点を準備。同球場副場長も「いまはあんまりないですよね、ああいう球場は」と笑う。

 また、72年に開設された隣接のゴルフ練習場「外苑ゴルフクラブ」の西練習場として73年から使用されているのが、神宮第二の最大の特徴だ。試合が行われていない時はゴルフボールが外野の人工芝めがけて打ち込まれる-。初めて見る人は度肝を抜かれる光景。高校野球開催中は東練習場のみと打席エリアを縮小し、打球距離も66ヤードで営業。試合が終われば、150ヤードの距離がある神宮第二の全打席が開放される。

 高校野球の試合からゴルフ練習場への切り替えは試合終了後15~20分で終える。「ストレスないように。まずないですからね、ゴルフ場と野球場が一緒になっているというところは」と副場長。双方のお客さんに満足してもらうように心掛けている。

 60年近くの歴史の中では、早実・荒木大輔(現日本ハム2軍監督)ら数多くの名選手たちがこの地で熱戦を繰り広げてきた。直近では同じく早実で高校通算111本塁打をマークした清宮幸太郎(現日本ハム)が高校第1号を放った思い出の地だ。

 その怪物ぶりは、何もホームランだけではない。副場長がいまでも鮮明に覚えているのが清宮が2年春だった時の東京大会での出来事。「ファウルボールが神宮球場に入っちゃったってことがあったんです。やっぱり力が他の選手とは違っているのかなって」。

 こぢんまりとしていながら、どこか愛着あふれる雰囲気を放つ神宮第二。東京都高野連の事務局に50年以上勤める横山幸子さんは「(試合会場が)第二球場ってなるとみんなが喜んだ。『神宮』っていうのがあるから」と球児からの人気の高さを明かした。

 神宮第二にとって最後の大会がいよいよ目前に迫ってきた。「第二=高校野球っていう感じだから。なくなるっていうのはもう、さみしいわね」と横山さん。来春センバツを目指す球児たちのプレーが花を添えてくれるにちがいない。(デイリースポーツ・佐藤敬久)

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