【野球】オリックス ドラフト7位からの下克上“反骨の男”中川
8月に入ってオリックスのドラフト7位・中川圭太内野手(東洋大)が再スタートを切った。1日・ロッテ戦で途中出場、同点打を放つと2日・西武戦でスタメン復帰、快音を響かせている。
4月20日・楽天戦でプロ初出場を果たして以降、一気にレギュラーを獲得。交流戦では新人選手としては初の首位打者にまで輝いた。ほとんどが初対戦の投手を相手に打率・386という高打率、打撃センスの良さがなければあり得ない数字だ。
また、6月28日・西武戦では2016年の吉田正尚以来となる新人4番に入り、6試合連続マルチ安打のパ・新人タイ記録にも到達した。
ドラフト最下位で指名した選手がこんな活躍をするとは思ってもみなかった。印象に残っているのは昨年12月の新入団選手発表の席。「1年目からクリーンアップを打ちます」と宣言した。
「はったりです(笑)自信なんてないです。本当はファームからしっかり鍛えて1軍を目指すと言うつもりだったんです。ドラフト7位なんで何か言わないと目立てない。上の人に印象に残るようにと思って」
中川と接していて感じるのは頭の良さだ。取材に応じる際には質問の意図を考え的確な答えを用意する。名門PL学園最後のプロ野球選手の質問は繰り返されるが、嫌な顔をすることなく、そのときに最適な答えを話す。
そんな男は野球でもクレバーな面を見せてきた。
年が明けて新人合同自主トレは大学の卒業試験のためほとんど欠席した。キャンプも2軍スタートとあって出遅れたという印象だった。
「焦りはなかったです。実は向こうでマシンを打ち込んでいました。チームに戻ったときには“全然やっていませんでした”と伝えましたけどしっかり練習はしていました」
ほかの新人選手が故障を予防するための軽めのメニューをこなしている間に徹底的に打ち込んできたというわけだ。
開幕は2軍。ウエスタン初戦で4安打6打点と大当たりするなど結果を残した。
「心配の方が大きかったですね。調子がいいわけではないし、なんで打てているのか分からなかった」
浮かれることなく自分の打撃を見つめ直した。藤井、米村の2軍打撃コーチのアドバイスに耳を傾けつつプロで通用する打撃フォームを探し求めた。
「プロで本塁打を打つのは無理。体が細いので本当は足を上げて反動で打ちたいのですが、プロの球は強いのでそれでは負けてしまう。すり足に近い格好でタイミングを取ってカウンターパンチの要領でボールの力を利用して打ち返しています」
球宴明けからは疲労を考慮されスタメンを外れることが多くなった。
「疲れですか?評価は他人がするものですから。見返すというか覆すために証明していくだけです」
“反骨の男”はそう言って笑顔を見せた。
新人王レースは高橋礼、甲斐野のソフトバンク勢がリードしている。だが、まさかの逆転劇があるのではないか。そんな思いにさせられるルーキーだ。(デイリースポーツ・達野淳司)