【野球】亡き娘に捧げる最高のシーズンを…中日・森監督が今季にかける特別な思い

 開幕の響きに、身も心も一層引き締まる。特別な思いが重なるシーズンとあれば、百戦錬磨の男であっても高揚感は抑えきれない。中日・森繁和監督(63)が6年ぶりのAクラス、7年ぶりのリーグ制覇を目指して船出する。

 昨年8月7日、長女・麗華さんが乳がんのため、35歳の若さで天国へ旅立った。最悪の事態を覚悟していたとはいえ、あまりにも早い別れに心身は疲弊した。チーム関係者の前では空元気を装ってみても、1人になると背中が自然と丸まっていた。酒量も増えた。熟睡できず、睡眠導入剤を服用することもあった。

 麗華さんの体に悪性腫瘍が見つかった際、森監督はあらゆるルートを駆使して、快方に向かうための道を探った。この薬が効くんじゃないか、ここの先生が良いと思う…。最愛の娘を苦しめる病魔を退治するため、力の限りを尽くした。

 「早いよ…」。やりたいことが、まだまだたくさんあったはず。娘の無念さを思うと、自分の無力さが情けなくもあった。

 谷繁元信監督がシーズン途中で休養し、監督代行を務めていた2016年。「監督だけの責任じゃない」。森ヘッドコーチも退団の意志を固めていた。だが9月下旬、球団から来季の新監督就任を打診された。断るつもりだった。でも…。ある人の言葉が背中を押した。

 「やればいいじゃん。やりたくてもやれない人が多いのに、やってくれってお願いされたんでしょ。やるべきだよ」

 病と闘いながら自分を勇気づけ、後押ししてくれた娘の存在が、監督就任を決断させた。チームの再生、再建のために戦うと決めた。

 「あの言葉がなかったらな…。今年は若い投手も育ってきてるし、去年より悪くなることはないと踏んでる。やるからには一番上を見て戦うよ。怖さを知らない若さってのは、時に俺らの想像を超える結果を残すことがあるからな」

 監督就任初年度の昨年は、リーグ連覇を飾った広島に28・5ゲーム離された59勝79敗5分けの5位に終わった。「2年で次の人に渡せるチームを作りたい」と話していた監督就任時。昨年の反省と失敗を肥やしに、収穫は今季のさらなる飛躍に生かす-。空から見守ってくれる麗華さんのためにも、最高の秋を迎えてみせる。(デイリースポーツ・鈴木健一)

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