【野球】病気と闘い続けた今浪惜しまれながら引退 ファンへ「11年間ありがとう」

 今季限りで現役引退した前ヤクルトの今浪隆博内野手(33)。昨年、甲状腺機能低下症(橋本病)を発症し、今季は7試合の出場だった。10月3日、今浪は「『引退します』と言いました。今の僕の体では戦えない。橋本病です」と退く意向を説明した。

 2014年途中に日本ハムからトレードで加入。勝負強いバッティングでチームの勝利に貢献するなど、多くのファンからも愛された。だが16年に「甲状腺機能低下症」を発症。甲状腺ホルモンの分泌が低下し、体の活動性が低下する病気という。圧倒的に女性が多いとされ、眠気、記憶障害、抑うつ、無気力など症状はさまざま。生涯治療が続くとされている。

 今季の4月25日、今浪は2軍施設で調整を行っていた。2月の春季キャンプで2度のぎっくり腰に襲われ、4月に入ってからは首痛にも悩まされていた。「右側が向けなくなって。これも全て病気が関係しているのかな?と思ってしまう。気付いたらネットで調べてしまったり。意外と経験者がいるんです」と経験者の声を励みにしたこともあるという。

 「僕の記事は引退してから書いて下さい」と笑って言ったが、しかしこの時すでに「だめだったらやめればいい」と思ってしまうほどまでに、今浪の体をむしばんでいたのだ。

 引退は応援し続けてきたファンへも、衝撃を与えた。球団へ「ファン感で、今浪さんにあいさつして欲しい」とファンから多くのメッセージが届いた。その声に応え11月23日、入場曲であるSEKAI NO OWARI「スターライトパレード」に乗せて、今浪がファンの前に登場した。

 「ファンの方がすごく温かくてプレーしやすい環境で、成績も上向いた。ファンのおかげです。11年間、応援ありがとうございました。この場を設けて頂いた球団、ここ(神宮球場)にいる今浪チルドレンの皆さんありがとうございました」と溢れんばかりの感謝の思いを言葉にした。

 最初は「自分が出てくるのは違う」と断っていたというが、「終わってみれば良かった。こんな大勢の前でよくプレーしてたなって改めて思った」と感じたという。

 あいさつでは“今浪節”を披露。「引退の理由は広岡大志に押し出されたからです(笑)」と同じく遊撃を守る若手の期待株を名指しし、球場の笑いを誘った。「売名です。人気ないから(笑)。ファームにいた時『大志のためにやろう』がみんなの合い言葉だった」と後輩を後押しする意味もあった。

 11年間で通算成績は405試合に出場し、打率・261、3本塁打、69打点。苦しみながらも戦い続けた男の第二の人生を、ファンの皆さんと共に応援していきたい。(デイリースポーツ・疋田有佳里)

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