【スポーツ】20歳の新星丸田陽七太と36歳の仕事人大竹秀典…勝敗を分けたのは

森岡和則会長(左)を相手にミット打ちをする丸田陽七太=川西市の森岡ジム
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 東洋太平洋スーパーバンタム級タイトルマッチが13日に東京・後楽園ホールで行われ、王者の大竹秀典(36)=金子=と指名挑戦者で同級1位の丸田陽七太(20)=森岡=との16歳差対決は、3-0の判定で大竹が2度目の防衛に成功した。

 179センチと長身の丸田はリーチを生かした左ジャブで距離を取り、主導権を握ろうとしたが、2回に予期せぬアクシデントが関西の新星を襲った。左フックを放った際に「骨か堅いところを打って」左拳を痛めてしまったという。

 試合後の控室でバンデージを取った丸田の左拳は、中指の部分が内出血で腫れ上がっていた。「自分は左中心で戦う選手。左を突いて距離を取って、入ってくるところを右で仕留めるボクシングができなくなった」。生命線の左を早々に失った丸田は、距離をつぶして徹底した接近戦を挑んでくる大竹のペースに巻き込まれ、コーナーを背負いショートパンチを浴び続けた。

 8回の公開採点では3人のジャッジ全員が78-74で大竹を支持。丸田は残り全4ラウンドを取ってもドロー(大竹の防衛)。ダウンを奪うかKOしか勝利の道は残されていなかった。11、12回には怒濤(どとう)のラッシュで聖地を沸かせた。「最後の方は楽しかった」と時折笑みを浮かべながら力強い拳を繰り出したが、全ては遅すぎた。

 ベルトを守った大竹は「接近戦での対処の仕方にキャリアの差が出た」と勝因を分析した。左が使えないことで、丸田は持ち味の強烈な左ボディーを打てなかった。それなら距離を取って右に活路を見い出してもよかったのだが、左を突けないことで右の距離感が的確につかむことができなかったようだ。結局、前に出る大竹を押し返せなかった丸田は必然的にコーナーを背負う時間が増え、ポイントを奪われていった。

 丸田にとっては左拳のアクシデントが悔やまれる結果となったが、リングサイドでテレビ解説したIBF世界スーパーバンタム級王者の岩佐亮佑(セレス)は丸田が負傷を伝え聞くと、「それでもいかなければいけない。必死さ、力強さが足りなかった」と厳しく指摘した。何が起ころうとも、相手に握られた主導権を再び握り返すための引き出しをいくつ持っているか。その引き出しがキャリアという言葉に集約されるのかもしれない。老練な大竹に比べて、丸田はまだ無垢(むく)だった。

 プロ初黒星を喫したとはいえ、丸田はまだ6戦目の20歳。世界王者への道のりは、ほんの少し回り道を余儀なくされたが、この夜も随所に才能を示すなど、ポテンシャルに疑いの余地はない。聖地で流した悔し涙と得がたい経験が、丸田をさらに成長させるはずだ。(デイリースポーツ・山本直弘)

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