【野球】広島・加藤に九回2死で大記録を逃した先輩からエール

 あとアウト2つだった。広島のドラフト1位・加藤拓也投手(22)=慶大=が7日、プロ初登板初先発となったヤクルト戦(マツダスタジアム)で九回1死まで無安打無得点投球を続けながら、バレンティンに左前打を許してプロ初登板ノーヒットノーランという大記録を逃した。

 バレンティンの一打をきっかけに失点して途中降板となったが、プロ初登板初先発初白星を挙げた加藤にエールを送るのが、現役時代に九回2死まで無安打無得点を続けながらノーヒットノーランを逃したデイリースポーツ評論家の安仁屋宗八氏だ。

 広島カープOB会長であり、今キャンプで臨時コーチも務めた安仁屋氏は、加藤の投球を見ながら「投球自体は最高だった。荒れ球は持ち味。ノーヒットノーランは言葉には出さないが、意識しない人はいない。普通できんことだからできたら良かったけど」と話した。

 安仁屋氏は、プロ3年目の1966年7月31日、広島市民球場で行われた巨人とのダブルヘッダー第1試合で九回2死まで2四球のみで無安打無得点試合達成まであと1アウトにこぎつけていた。九回2死一塁。ここで2番・黒江透修を迎えた。あと1つアウトを取れば、大記録達成だった。しかし、現実は厳しい。黒江に中前打され大記録を逃した。

 安仁屋氏は「次が王(貞治)さんだったから王さんにだけまわしたくなかった。あのときは黒江さんにヒットを打たれたショックより、王さんに回ってしまったショックがあった」と述懐する。

 2点リードながら2死一、二塁で王を迎えた。一発が出れば逆転される。大記録を逃したショックなど引きずっていられない。全身全霊で王と対峙。大ファウルを打たれながら、最後は一ゴロに仕留め1安打完封勝利でその年の4勝目を挙げた。

 当時の新聞に「ノーヒットノーランを逃したことより、勝てて良かった」と安堵した表情が伝えられていた。奇しくも加藤が「すごくほっとしています。勝てて良かったです」とヤクルト戦後のヒーローインタビューで答えた。

 大記録達成なら後年まで名前が残る。しかし、安仁屋氏は「わしは大記録を達成したら寿命が短いと思って、気持ちを切り替えて投げてきた」という。今では球場で大記録を阻んだ黒江氏に会えば当事を懐かしむことができる。

 沖縄出身プロ野球選手第1号として注目され、大記録を逃した2年後には23勝を挙げた。大記録を逃したことをバネに実働18年、プロ通算119勝を挙げた。そのうち34勝は黄金時代の巨人から挙げたもの。

 安仁屋氏はプロ初登板初先発で九回1死まで無安打投球を披露した加藤に「あの観衆の中でよく投げた。ノーヒットノーランは次の目標にすればいい」とエールを送った。大記録を逃したことをバネに加藤の躍進を期待する(デイリースポーツ・岩本 隆)

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